停電は結果事象であると同時に原因事象でもある(写真:写真AC)

■タマゴが先かニワトリが先か?

ハザード(リスク・災害と呼んでもよい)を「原因事象」と「結果事象」の2つに分ける考え方があります。例えば「地震の発生」は原因事象であり、その結果起こる建物が半壊して「社内に立ち入りできない」とか、公共交通機関の寸断による「通勤困難」など、人的・物的経営資源への影響は結果事象とみなされます。

近年はオールハザード型BCPのアプローチとして、どんなリスクかによらず結果事象ベースでBCPを組み立てることの重要性が指摘されています。

実は筆者もまた、結果事象という言葉は用いていないものの『新版 実践BCP策定マニュアル』(オーム社:2009年2月初版発行)の「リスク評価シート」の記入例で、同様のアプローチを解説しました。

また本連載の「第4回:新しいBCPに移行するためのヒント」でも、「対策の共通化」という見出しで、企業への被害や影響は経営資源に収れんする(つまり結果事象化する)という意味で、同じような意味合いのことを述べています。

しかしこれは「BCPでは結果事象による評価・対策・対応がすべてであり、原因事象による検討や対策は不要」という意味ではありません。というのは、ハザードには"因果性のジレンマ"、つまりタマゴが先かニワトリが先か?という性質があるからです。

「コンピューターシステムが使えない」という結果事象から見ると、停電は原因事象となる(写真:写真AC)

例えば、自然災害を原因事象として起こる「停電」は結果事象の一つとみなされますが、「コンピュータシステムが(停電により)使えない」という結果事象から見れば、停電は「原因事象」になります。

また、リスク低減対策(防災・減災対策など)を講じる際にはリスクの特性を知る必要がありますから、どうしても「原因事象」に遡らなくてはならない。停電の原因が「送電塔の倒壊」「漏電」「電気設備の浸水被害」のいずれの原因であるかによって、取るべき対策の中身が異なってくるということです。

このような理由から、筆者が提案する緊急対応プランのつくり方やリスク低減対策については、原因事象と結果事象を区別しない内容となっています。あえて結果事象を意識するなら、経営資源の代替戦略等を検討する際のアプローチであることを覚えておきましょう。