一方、図3 は「政治・経済」に関する個々のリスクの中で、今後12カ月の間に最も重大なリスクがどれかを尋ねた結果であり、英国(左側)と米国(右側)とに分けて表示されている。図2では英米間での違いが目立たなかったが、こちらでは英米間で認識に大きな差があるのが興味深い。

画像を拡大 図3. 「政治・経済」のカテゴリーで今後12カ月の間に最も懸念されているリスク(出典:Beazley / New world, new risks: How are businesses’ attitudes to risk & resilience changing?)

本報告書によると、米国で「Political risk」(政治的リスク)が比較的高くなっているのは、民主党が政権に復帰したことでビジネスに対する政府の介入が増えることが予想されているためだという。また英国で「Changes in legislation and regulation」(法規制の変更)が高めになっているが、これは英国が欧州連合(EU)離脱後も依然としてEUの法規制の影響を受けているためだと考えられている。具体的には情報管理に関するGDPR(注1)と、企業の説明責任に関するEU司令(2022年1月から発効)が例示されている。

なお、図の掲載は省略するが、これらの政治・経済に関するリスクに対して「よく準備できている」と回答された割合は、米国に比べて英国のほうが10ポイント程度低くなっている。この理由については本報告書中に記述されていないので筆者の推測であるが、EUから離脱しつつ部分的にEUのルールに従わなければならない英国の方が、状況がより複雑で準備しにくいのかもしれない(単に米国人の方が楽観的だという可能性もある)。

本報告書の最後には、調査結果をふまえて保険業界として考慮すべきことが1ページにまとめられている。保険業界(主に損害保険)の方々にとっては、このページを見るだけでも有益かもしれない。

本連載ではこれまでにもリスクマネジメントに関するアンケート調査の結果をいくつか紹介させていただいたが、ひとくちにリスクマネジメントといっても、調査の切り口や整理の仕方によって、見えてくるものが大きく異なる。今回の報告書ではこのことを改めて認識させられた。

注1)EUの「一般データ保護規則」(General Data Protection Regulation)の略