図1は調査結果をもとにして作られた「リスク・レジリエンス・マトリクス」である。リスクアセスメントの結果をまとめるのに用いられるマトリクスに似ているが、縦軸にリスクを、横軸にレジリエンスをとった独自のマトリクスである点にご注意いただきたい。

縦軸は、個々のリスクに対して回答者が認識している懸念の度合いを表わしている。これに対して横軸は、個々のリスクに対して自社がどのくらい準備できていると認識しているかを表わしている(右にいくほど準備ができている)。

画像を拡大 図1. リスク・レジリエンス・マトリクス(出典:Beazley / New world, new risks: How are businesses’ attitudes to risk & resilience changing?)

サイバー攻撃に関するリスクとパンデミックとが最も右上、つまり「最も懸念されており、かつ準備できている」という位置にプロットされている。パンデミックに関してはすでに各社ともさまざまな対策を実施中であることから、最も右側に来ているものと思われる。

しかしながらサイバー攻撃に対して回答者の多くが準備できていると認識していることに関しては、本報告書では疑問が投げかけられている。これは、パンデミック対策の影響で業務のデジタル化が進む一方で、サイバー攻撃が増加傾向にある現状において、サイバー攻撃のリスクが高まっているのに対して対策方法などが開発途上なのではないか、という見立てに基づいている。

また保険業界としては、マトリクスの左上の部分が注目されている。ここは「リスクが高いと懸念されているのに対して、あまり備えができていない」という部分であり、サプライチェーンや法規制の変更、事業中断、気候変動、政治的リスクなどが含まれている。これらに関しては保険でカバーしにくいリスクが多いこともあり、顧客が保険会社に何を求めているのかを理解した上で、保険会社がもっと努力すべきだと指摘されている。