2021/09/29
【オピニオン】企業のコロナ対策 次のステップ
緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が解除された後、日常生活や経済活動はどうなるのか。政府の分科会は感染リスクが低いことを示す仕組みを活用して段階的に制限を緩和する方向を示していますが、企業はこうした動きに対応していくべきか。リスクマネジメントに関するコンサルティングを手がける本田茂樹氏に聞きました。
リスクコミュニケーションを深める「きっかけ」に
ミネルヴァベリタス顧問/信州大学特任教授
現在の三井住友海上火災保険に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントに関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
接種証明の活用は安全配慮義務か
どこまでいってもワクチン接種は本人の意思。接種の有無によって差別が助長されるような制度やその運用を慎むべきなのは当然で、問題は何が差別に該当するのかでしょう。
例えば医療機関や高齢者施設において、ワクチンを2回接種していない職員が患者や他の医療従事者を危険にさらすという観点から一定のエリアに立ち入らないようにする、これは差別ではなく区別ということで容認されるかもしれません。しかし国内の一般企業の職場で、例えばワクチンを打っていない人は出社を禁止しテレワークにする、そうした運用が通るかはこれからの課題です。
つまりケースバイケースで、いまの段階で何がマル、何がバツというのは非常に難しい。
もちろん、企業には従業員の安全を守る義務があります。建設現場におけるヘルメットの着用を例にとれば、着けたい人だけ着けなさいといった程度の指導では、到底、安全配慮義務を果たしたとはいえない。言葉による指導にとどまらず、朝礼時に職長が身なりを点検し、一人一人の着用を確認してから作業に送り出すくらいまでやる必要があるでしょう。
これをワクチンに置き換えると、接種は従業員本人の重症化リスクを下げるとともに、病床ひっ迫などの社会的混乱を緩和する効果も期待されます。その点で、建設現場のヘルメット着用よりも意味は深いかもしれません。
しかし、ヘルメットの着用によるデメリットはせいぜい頭が蒸れる、暑いといった程度なのに対し、ワクチンはそれよりはるかに重篤な症状を引き起こす可能性がある。そのためヘルメットは「着けなさい」といえますが、ワクチンは「打ちなさい」といい切ることができません。
- keyword
- 緊急事態宣言解除
- 行動制限
- 接種証明
- 陰性証明
- ワクチン・検査パッケージ
【オピニオン】企業のコロナ対策 次のステップの他の記事
- 従業員のワクチン接種歴把握に積極的な企業は3割
- 出口へ向かういまこそコロナ対応の記録を
- 制限緩和は接種・未接種の区別なく行うべき
- 最終的には社会が感染リスクをどこまで容認できるか
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/12/05
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/03
-
パリ2024のテロ対策期間中の計画を阻止した点では成功
2024年最大のイベントだったパリオリンピック。ロシアのウクライナ侵略や激化する中東情勢など、世界的に不安定な時期での開催だった。パリ大会のテロ対策は成功だったのか、危機管理が専門で日本大学危機管理学部教授である福田充氏とともにパリオリンピックを振り返った。
2024/11/29
-
-
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方