2021/10/13
事例から学ぶ
分析・計測機器の総合メーカーの堀場製作所は、BCPの取り組みを通じて災害への対応はもちろん、突発的な社会の要請や急激なマーケット変化にも対応できる組織力を着実に高めている。新型コロナへの対応では、感染対策を徹底しながら通常レベルで事業を継続するだけでなく、いち早く抗体検査チップの開発に着手した。過去の災害でも東日本大震災では放射線測定器を一気に増産、熊本地震では主力工場が被災しながらも、災害医療で需要が高まる医用計測器を生産し続けた。こうした変化に対応ができる理由は、ホリバリアンと呼ばれる社員一人一人の意識改革にあるようだ。
堀場製作所
本社:京都府
❶統合マネジメントシステムで経営改善
・いくつものISOを一体的に回すことでPDCAサイクルを組織文化としている
❷高まる需要に対応するのもBCP
・早く復旧するだけでなく急激な需要の高まりなどマーケット変化に迅速・柔軟に対応する
❸社員一人一人の意識が事業継続の要
・被災時に事業復旧のために社員一人一人がどのような行動をとれるか。機転の利く人、機転の利く実行行動が非常に重要
「おもしろおかしく」を大切にするホリバリアン
堀場製作所の社員は約8000人。そのうちの6割は海外の社員というグローバル企業だ。今年の売上は2200億円で過去最高を見込み(2021年8月10日決算発表時点)、この30年間成長を続けている。
同社の事業セグメントは、自動車、環境・プロセス、医用、半導体、科学の5つ。それぞれの分野において「はかる」技術を最大の強みに、さまざまな製品を開発・製造している。「できあがった装置は5つの事業領域で、顧客である大学、官公庁、研究機関、メーカー、医療機関などで使われ、顧客の取り組みを通じて社会の課題解決につながっていく」というのが、同社の描く企業価値の創造プロセスだ。
社是は「おもしろおかしく」。1978 年に創業者の故・堀場雅夫が1978 年に制定した言葉で、英語では「Joy and Fun」と訳されている。
同社で働く社員「ホリバリアン」の心の拠り所とされ、その意図するところは、人生の最も活動的な時間のほとんどを費やす会社において、社員一人一人がやりがいとチャレンジ精神をもって取り組むことで、おもしろおかしい人生を実現してほしいという願いが込められている。
PDCAを組織の文化に
一方で、経営の拠りどころの1つとするのが、マネジメントシステムである。
1993年に初めて品質マネジメントシステムISO9001を取得したのを皮切りに、環境マネジメントシステムISO14001、労働安全衛生OHSAS18001(現在ISO45001)を取得して、2004 年からは、これら3つの規格を統合して運用する統合マネジメントシステム「IMS」を構築。「製品やサービスの提供を通じ、科学技術の発展と地球環境保全に貢献する」という同社の使命を達成するために、グローバルスタンダードであるISO マネジメントシステムを複数認証取得し、それらを統合して運用することで、組織におけるあらゆるプロセスを明確化し、状況把握やリスク分析を行い、確実に課題に取り組むPDCAサイクルを組織文化に植え付けている。日々変化する世界情勢や、増加するグローバル要求に速やかに対応するための秘訣が隠されている。
同社開発本部ジュニアコーポレートオフィサー佐竹司氏は「一本化したシステムは、グループ各社にも浸透させている。3つのISO だけではなく、戦略的に必要な認証システムを会社が取ることによって競争力を高めていこうと、2004 年には分析センターで校正業務のマネジメントシステムであるISO17025を、その後、医療機器の品質マネジメントシステムであるISO13485の認証を2013年に取得。さらに2014 年には事業継続マネジメントシステムISO22301を追加していった」と、経営戦略としてのISO活動の展開について説明する。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月19日配信アーカイブ】
【3月19日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:副業・兼業のリスク
2024/03/19
-
リスク担当者も押さえておきたいサイバーセキュリティ対策の最新動向
本勉強会では、クラウド対応のサイバーセキュリティ対策の動向を、簡単にわかりやすく具体的なソリューションの内容を交えながら解説します。2024年3月8日開催。
2024/03/18
-
発災20分で対策本部をスタートする初動体制
総合スーパーやショッピングモールなど全国各地のイオン系列の施設を中心に設備管理、警備、清掃をはじめとしたファシリティマネジメント事業を展開するイオンディライト(東京都千代田区、濵田和成社長)。元日に発生した能登半島地震では、発災から20分後にオンラインの本社災害対策本部を立ち上げ、翌2日は現地に応援部隊を派遣し、被害状況の把握と復旧活動の支援を開始しました。
2024/03/18
-
-
能登半島地震における企業の対応レジリエンスの実現に向けて
能登半島地震で企業の防災・BCPの何が機能し、何が機能しなかったのか。突きつけられた課題は何か。復興に向けどのような視点が求められるのか。能登で起きたことを検証し、教訓を今後のレジリエンスに生かすため、リスク対策.comがこの2カ月の取材から企業の対応を整理しました。2024年3月11日開催。
2024/03/12
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月12日配信アーカイブ】
【3月12日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:東日本大震災 企業のハンズオン支援
2024/03/12
-
-
-
能登の復興は日本のこれからを問いかける
半島奥地、地すべり地、過疎高齢化などの条件が、能登半島地震の被害を拡大したとされています。しかし、そもそも日本の生活基盤は地域の地形と風土の上に築かれ、その基盤が過疎高齢化で揺らいでいるのは全国共通。金沢大学准教授で石川県防災会議震災対策部会委員を務める青木賢人氏に、被害に影響を与えた能登の特性と今後の復興について聞きました。
2024/03/10
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方