市場抽出に当たっては、さまざまな点に配慮している。例えば住宅リフォームの耐震化市場は含まれているが、新築住宅市場は含まれていない。新築の住宅は新耐震基準で建てられているため、これも国土強靱化施策の結果であると整理してしまえば国土強靱化市場であるともいえるかもしれない。しかし、このように既に個別の法令で基準として決まっているものまで拾ってしまうと、国土強靱化市場の意味づけが薄まってしまうため、このようなものは省いている。また、サイバーセキュリティ関連市場は、有識者からは国土強靱化に密接に関連するという指摘があったものの、基本計画での記載がないために今回は見送ったという。

「関連市場」とは、直接に国土強靱化を目的としているわけではないが、国土強靱化にも寄与すると思われる財やサービスに関する市場だ。ここには、災害時に住宅の電源として利用できる電気自動車の市場や、国土利用のリダンダンシー(インフラ等の多重化)の向上に寄与するリニア新幹線の市場なども含まれている。

国土強靱化分野への民間の積極投資を促すため、今回は2020年の市場推計も行った。関連市場の中には、技術開発の動向によって大きく規模が変わる市場や、国土強靱化施策以外の施策の影響を受ける市場が含まれており、未知数の部分も大きいため、合計値を出す推計はコア市場のみに絞っているが、その推計規模は11.8兆円~13.5兆円。推計には各市場の見通しを合算しているために幅を持たせている。

また、当然かもしれないが、この推計市場の中には「公共事業」は含まれていない。

「個別の市場ごとにそれぞれの推計方法で試算し、それらを合算しているため、その試算根拠なども統一されておらず、合計値の意味あいが分かりにくいという批判は承知している。ただ、1つの参考値として、まずは民間企業が国土強靱化分野に参入したり投資したりする際の手がかりになってくれればいいと考えている」(吉田氏)。