2016/08/02
誌面情報 vol54
市場抽出に当たっては、さまざまな点に配慮している。例えば住宅リフォームの耐震化市場は含まれているが、新築住宅市場は含まれていない。新築の住宅は新耐震基準で建てられているため、これも国土強靱化施策の結果であると整理してしまえば国土強靱化市場であるともいえるかもしれない。しかし、このように既に個別の法令で基準として決まっているものまで拾ってしまうと、国土強靱化市場の意味づけが薄まってしまうため、このようなものは省いている。また、サイバーセキュリティ関連市場は、有識者からは国土強靱化に密接に関連するという指摘があったものの、基本計画での記載がないために今回は見送ったという。
「関連市場」とは、直接に国土強靱化を目的としているわけではないが、国土強靱化にも寄与すると思われる財やサービスに関する市場だ。ここには、災害時に住宅の電源として利用できる電気自動車の市場や、国土利用のリダンダンシー(インフラ等の多重化)の向上に寄与するリニア新幹線の市場なども含まれている。
国土強靱化分野への民間の積極投資を促すため、今回は2020年の市場推計も行った。関連市場の中には、技術開発の動向によって大きく規模が変わる市場や、国土強靱化施策以外の施策の影響を受ける市場が含まれており、未知数の部分も大きいため、合計値を出す推計はコア市場のみに絞っているが、その推計規模は11.8兆円~13.5兆円。推計には各市場の見通しを合算しているために幅を持たせている。
また、当然かもしれないが、この推計市場の中には「公共事業」は含まれていない。
「個別の市場ごとにそれぞれの推計方法で試算し、それらを合算しているため、その試算根拠なども統一されておらず、合計値の意味あいが分かりにくいという批判は承知している。ただ、1つの参考値として、まずは民間企業が国土強靱化分野に参入したり投資したりする際の手がかりになってくれればいいと考えている」(吉田氏)。
誌面情報 vol54の他の記事
- 巻頭インタビュー 政府がBCP認証制度スタート
- 特別寄稿 災害医療に必要な非日常性(下)
- 宗教・文化の違いでトラブルも
- 海外安全対策が変わった!
- 海外安全対策「虎の巻」
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/10/21
-
「防災といえば応用地質」。リスクを可視化し災害に強い社会に貢献
地盤調査最大手の応用地質は、創業以来のミッションに位置付けてきた自然災害の軽減に向けてビジネス領域を拡大。保有するデータと専門知見にデジタル技術を組み合わせ、災害リスクを可視化して防災・BCPのあらゆる領域・フェーズをサポートします。天野洋文社長に今後の事業戦略を聞きました。
2025/10/20
-
-
-
走行データの活用で社用車をより安全に効率よく
スマートドライブは、自動車のセンサーやカメラのデータを収集・分析するオープンなプラットフォームを提供。移動の効率と安全の向上に資するサービスとして導入実績を伸ばしています。目指すのは移動の「負」がなくなる社会。代表取締役の北川烈氏に、事業概要と今後の展開を聞きました。
2025/10/14
-
-
-
-
トヨタ流「災害対応の要諦」いつ、どこに、どのくらいの量を届ける―原単位の考え方が災害時に求められる
被災地での初動支援や現場での調整、そして事業継続――。トヨタ自動車シニアフェローの朝倉正司氏は、1995年の阪神・淡路大震災から、2007年の新潟県中越沖地震、2011年のタイ洪水、2016年熊本地震、2024年能登半島地震など、国内外の数々の災害現場において、その復旧活動を牽引してきた。常に心掛けてきたのはどのようなことか、課題になったことは何か、来る大規模な災害にどう備えればいいのか、朝倉氏に聞いた。
2025/10/13
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方