2016/07/03
誌面情報 vol54
渡航前に確認・準備すべき対策とテロ遭遇時の対応
外務省領事局海外邦人安全課 邦人援護官 伯耆田修氏
海外での安全対策のあり方が、ここ数年で大きく変わっている。背景にあるのはイスラム過激派組織などによる一般市民を狙ったテロ事件の増加だ。一方で、自然災害や感染症などの脅威も増している。日本企業は従業員の安全対策にどう取り組めばいいのか。過去18 年間で海外5 公館に勤務し、ルー大使公邸占拠事件をはじめ、ニュージーランドのクライストチャーチの地震、アルジェリアでのガスプラントの襲撃事件、フィリピンにおける大型台風通過、ネパール地震など様々な事件・事故・災害において現地で危機対応にあたった外務省領事局邦人援護官の伯耆田修氏に聞いた。
本記事は、2月12日に本誌が開催した海外進出リスク対策セミナーでの講演をもとに取材したものであり、必ずしも外務省の公式見解でない場合もある。
邦人をとりまく国際環境の変化
4年ぐらい前まで私どもは、海外に行く日本人に対して「テロに巻き込まれないように十分注意してください」「テロが多いのは中東・アフリカですから注意してください」「居住者は十分注意してください」ということを主に呼び掛けていたが、2013年1月に発生したアルジェリアのガスプラント襲撃事件では、日本の進出企業の日本人従業員が殺害された。
中東・アフリカに限らず、先進国でもテロ事件が多発しており、今や全世界どこにおいてもテロ事件が発生してもおかしくない。日本人も標的になってきている。
2016年2月現在、退避勧告が発出されている国は、一部地域を含めると26カ国・地域に上る。そのうちの6カ国は、全土にわたって退避を勧告している地域で、アフガニスタン・シリア・イエメン・ソマリア・リビア・中央アフリカである。中東・アフリカには多くの退避勧告や渡航中止勧告の危険情報が発出されており、非常に危険な地域もある。
アメリカの研究機関によると、現在、イスラム過激派組織「イラクとレバントのイスラム国(ISIL)」の戦闘員は約3万人に上り、そのうちの半数が外国人部隊であるという。内訳はチュニジア人が一番多くて3000人ぐらい、ロシア人が1700人、フランス人が1200人、イギリス人も600人ほどが戦闘員に加わっているという調査結果が出ている。このような人たちが母国に戻れば、いつ、テロを起こしてもおかしくない。つまり、中東やアフリカだけでなく、世界各国どこでもテロが起こる可能性があるということだ。
誌面情報 vol54の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月19日配信アーカイブ】
【3月19日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:副業・兼業のリスク
2024/03/19
-
リスク担当者も押さえておきたいサイバーセキュリティ対策の最新動向
本勉強会では、クラウド対応のサイバーセキュリティ対策の動向を、簡単にわかりやすく具体的なソリューションの内容を交えながら解説します。2024年3月8日開催。
2024/03/18
-
発災20分で対策本部をスタートする初動体制
総合スーパーやショッピングモールなど全国各地のイオン系列の施設を中心に設備管理、警備、清掃をはじめとしたファシリティマネジメント事業を展開するイオンディライト(東京都千代田区、濵田和成社長)。元日に発生した能登半島地震では、発災から20分後にオンラインの本社災害対策本部を立ち上げ、翌2日は現地に応援部隊を派遣し、被害状況の把握と復旧活動の支援を開始しました。
2024/03/18
-
-
能登半島地震における企業の対応レジリエンスの実現に向けて
能登半島地震で企業の防災・BCPの何が機能し、何が機能しなかったのか。突きつけられた課題は何か。復興に向けどのような視点が求められるのか。能登で起きたことを検証し、教訓を今後のレジリエンスに生かすため、リスク対策.comがこの2カ月の取材から企業の対応を整理しました。2024年3月11日開催。
2024/03/12
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月12日配信アーカイブ】
【3月12日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:東日本大震災 企業のハンズオン支援
2024/03/12
-
-
-
能登の復興は日本のこれからを問いかける
半島奥地、地すべり地、過疎高齢化などの条件が、能登半島地震の被害を拡大したとされています。しかし、そもそも日本の生活基盤は地域の地形と風土の上に築かれ、その基盤が過疎高齢化で揺らいでいるのは全国共通。金沢大学准教授で石川県防災会議震災対策部会委員を務める青木賢人氏に、被害に影響を与えた能登の特性と今後の復興について聞きました。
2024/03/10
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方