内閣官房国土強靱化推進室は今年2月、有識者からなる会議である「ナショナル・レジリエンス懇談会」から「国土強靱化に資する民間の取組の促進について」と題するとりまとめ文書を受け取った。その中で、国土強靱化に資する民間の取り組み促進施策として「国土強靱化貢献団体」を国のガイドラインに基づき第三者が認証する制度を創設することが提案されるとともに、民間の市場参入と投資を後押しするために、初めて国土強靱化市場規模推計の結果が公表された。その規模は2013年時点でおよそ12兆円(コア市場8兆円、関連市場4兆円)。2020年にはコア市場だけで3.9兆から5.6兆円の伸びが期待できるという。内閣官房国土強靱化推進室に、国による民間のレジリエンスへの取り組み促進策を取材した。

編集部注:「リスク対策.com」本誌2016年3月25日号(Vol.54)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年8月2日)

「2013年の暮れに国土強靱化基本法が国会で成立し、その後、法律に基づいて基本計画が策定され、さらにアクションプランが年度ごとに策定されてきた。国が計画に基づいて施策を進める一方で、地方でも地域強靱化計画の策定が始まり、2016年1月28日現在、45都道府県、24市町村で計画策定済ないし策定中となっている。そこで、今回は、国土強靱化におけるもう1つの重要なプレイヤーである民間の皆さんの取り組みを応援することが重要と考えた」と話すのは、内閣官房国土強靱化推進室参事官の吉田恭氏。「国土強靱化というと、世の中ではイコール公共事業というイメージを持たれているかもしれないが、それだけではないということを正しく認識してもらう必要があった」と強調する。

国土強靱化基本法は東日本大震災の教訓を踏まえて第2次安倍政権のもとで制定された。45の「回避すべき起きてはならない事態」を想定し、さらにそのうち15の施策を重点化し、取り組みを進めている。「国土強靱化施策は国家のリスク・マネジメントであり、公共事業だけでなく、民間投資を促す全分野にまたがる国民国家プロジェクトである」と初代の担当大臣であった古屋圭司氏(現衆議院議員)は本誌のインタビューに回答している。

企業BCPを国のガイドラインに基づき認証する
「国土強靱化貢献団体」認証の創設

民間企業の国土強靱化への取り組みを促進するにあたり、有識者で構成されるナショナル・レジリエンス懇談会の下に設けられたワーキング・グループでは、まず民間の活動を何らかの形で国として評価することが有効であろうと考え、その次に、それではどのような活動をどのように評価すべきかを検討した。国土強靱化に関わる民間の活動は概ね3つに分類される。まず1つめは、本来のビジネスとして防災商品やサービスを提供する活動。2つめは、企業の事業継続のための自助の活動。最後に、自分の本業と関係なく、地域に根差した社会貢献として防災・減災に取り組む共助の活動だ。

議論が進むなかで、本来のビジネスとして行われる防災商品やサービスの提供は、一義的には、国ではなく市場が判断するもので、今回の対象からはとりあえず外すことになった。国土強靱化の促進には、事業継続(自助)と社会貢献(共助)をともに伸ばしていくことが必要だと懇談会では結論付けたのだ。一方で、企業の事業継続が国の強靱化にとって必要なものであることはもちろんだが、現在の仕組みではなかなか進まない部分もあるという。