2016/08/02
誌面情報 vol54
さらに現在、滋賀銀行や百五銀行(三重県)などBCPを策定することにより金利を優遇する地銀も少なくない。そうした融資を行う際にも、専門家の目で評価される仕組みは生かされるのではないか。企業の事業継続投資は外から見ることはできないため、必ずしも市場で評価されないが、第三者が認証することにより市場でそれを正当に評価できるようになる。見えない努力をした企業が、それをしなかった企業に比べ、取引や金融で有利な条件を得ることができるようになる。吉田氏はその動きが拡大していくことで、さらに事業継続投資を行う企業が増えるといった好循環を期待しているという。
国土強靱化コア市場は2020年に11.8兆円~13.5兆円に
「国土強靱化は公共投資だけではなく、民間市場の持つインパクトも大きい。強靱化が市場を通じて国民経済や市場経済の成長に寄与することを数字で示してみたかった。そうすることで民間企業が規模感や見通しを持てるようになり、国土強靱化市場への積極的な参入や開発投資を促すことができるのではないかと考えた」(吉田氏)
今回、国が出した試算では、国土強靱化市場規模は2013年時点でおよそ12兆円。そのうち、防災と直接関係するコア市場は8兆円、関連市場が4兆円とした。一方で、別途推計した国土強靱化関連の公的支出は、国・地方公共団体を合わせて約12.4兆円となり、偶然だが国土強靱化に関する民間の市場の大きさと公的支出の大きさはほぼ同じ規模となった。
推計は、まず何が「国土強靱化市場なのか」を定義するところから始まったという。もともと「国土強靱化市場」には決まった定義は存在しないのだが、今回の推計に使った定義の根拠は、国土強靱化基本計画だ。計画には12の施策分野と67の推進方針がある。これらの文言を1つひとつ検討し、そこから生まれ出ると考えられる市場を洗い出していった。例えば、計画に以下のような文言が掲載されていたとする。

ここから、「密集市街地の延焼防止」とあれば「密集市街地の解消市場」を、「住宅・建築物・学校の耐震化」とあれば、「非耐震建物の耐震改修市場」などをその分野の市場として抽出する。それらを産業分類上の軸の上で整理し、重なっている部分を排除するなどしたのち、各市場を合算する。抽出した個別の市場推計一覧を次ページに記した。
誌面情報 vol54の他の記事
- 巻頭インタビュー 政府がBCP認証制度スタート
- 特別寄稿 災害医療に必要な非日常性(下)
- 宗教・文化の違いでトラブルも
- 海外安全対策が変わった!
- 海外安全対策「虎の巻」
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/05/20
-
永野芽郁と田中圭の報道から考える広告リスクタレントの不倫疑惑
「不倫報道で契約解除」は企業の広告・広報担当者にとって決して珍しい判断ではなくなりました。特に「B to C」企業は世間の空気に過敏にならざるを得ない構造があります。永野芽郁さんと田中圭さんという人気俳優による不倫報道が世間をにぎわせています。企業にとって本質的に問われるべきは、タレントの私生活そのものではなく「報道によって自社ブランドが受けるリスクをどう評価し、どう備えていたか」という事前準備と、報道後のブレない対応です。本稿では、広告タレント起用のリスクに対して、企業が準備しておくべきこと、そして“報道された時”にどう判断すべきかを整理します。
2025/05/20
-
-
-
「まさかうちが狙われるとは」経営者の本音に向き合う
「困った人を助け、困った人を生み出さず、世界中のデータトラブルを解決します」。そんな理念のもと、あらゆるデータトラブルに対応するソリューションカンパニー。産業界のデータセキュリティーの現状をどう見ているのか、どうレベルを高めようとしているのかを聞きました。
2025/05/13
-
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/05/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方