福祉防災を大きく変える「個別避難計画」「福祉避難所」「福祉施設のBCP」の取り組み(写真:写真AC)

都市防災推進セミナーは「公益社団法人全国市有物件災害共済会」と「NPO法人東京いのちのポータルサイト」の主催で、この時期に毎年開催している。セミナー実施の初期段階から時々の防災に関する重要事項に焦点をあてて実施しているが、今年は11月11日に「福祉防災元年」の取り組みについてパネルディスカッションをオンラインで収録した。

テーマは『福祉防災元年~迫り来る地震や水災害に備え、避難行動要支援者の安全な避難を図り、福祉避難所の効果的な運営のために~』。具体的には①個別避難計画②福祉避難所③福祉施設のBCPについて、自治体職員と福祉事業者による先進的な事例紹介があり、日常の悩みや対策も話し合った。

その内容は11月25日~12月24日、YouTube(限定公開)で配信される。視聴するには、全国市有物件災害共済会ホームページの新着情報「2021年10月8日令和3年度第23回 都市防災推進セミナーの御案内」から、都市防災推進セミナー申込フォームで登録して申し込みを行う。

締切りは11月18日となっているが、現在も受け付けてくれるとのこと。申し込んだ方には後日、メールアドレスに受講用 URL を送信するとのことだ。

本連載では、このセミナー概要を2回に分けて紹介したい。

避難行動要支援者の避難支援に関する制度的変遷

(1)基調講演 総務省消防庁国民保護・防災部防災課長 荒竹宏之氏

荒竹氏からは「個別避難計画について」と題する基調講演があった。

避難行動要支援者の避難支援に関する制度的変遷について、1959年の伊勢湾台風、61年の災害対策基本法から説き起こし、80年代からは「災害弱者」という言葉が使われ始めたが、特に大きな制度変更はなかった旨を紹介。その後2004年に観測史上最大となる10個の台風が上陸し新潟県を中心に大きな被害をもたらしたことを機に、高齢者等の避難支援に関する検討会(※)が設置され、災害時要援護者の避難支援ガイドラインが作成されたという流れを解説した。

(※)私もこの検討会に参加したのだが、主に高齢者の水害時の避難を対象として、津波災害を除外したことは生涯の悔いとなった。もし、このとき津波避難を対象にして高齢者、障がい者等の個別避難計画を作成するとしていたら、また防災と福祉の連携が実現していたら、東日本大震災で多くの命を救えたはずだからだ。

 

避難行動要支援者の避難支援に関する制度はどう変わってきたか(写真:写真AC)

荒竹氏は続いて、東日本大震災発生後に避難行動要支援者名簿の作成が市町村に義務付けされたこと、しかしその後の水害でも高齢者等の被災が相次いだことから今年になって個別避難計画の作成を市町村の努力義務とする法改正がなされたことを解説。また個別避難計画の概要や京都府福知山市、茨城県常総市、愛知県犬山市の先進事例を紹介した。