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当サイトにアクセスされた方々の多くは、企業などの組織で災害対策や事業継続マネジメント(BCM)を担当されている方々なのではないかと思われるが、そのような方々の間では、人手や予算が足りないというのが恐らく共通の悩みであろう。今回紹介させていただくのは、そのような問題意識に正面から向き合った調査報告書である。

BCMの専門家や実務者による非営利団体である BCI(注1)は、2022年1月に「Business Continuity Resources Benchmarking Report 2022」を発表した。ここでresource、すなわち資源とは、BCMの活動に必要な人的および金銭的資源を指す。BCIの会員を中心として370以上の組織から回答を得たというアンケート調査をとおして、BCMに対する資源の投入状況を探ろうとするものである。

本報告書は下記URLにアクセスして、氏名やメールアドレスなどを登録すれば、無償でダウンロードできる。
https://www.thebci.org/resource/bci-business-continuity-resources-benchmarking-report-2022.html
(PDF 24ページ/約 1.0MB)


本報告書の最初に示されているデータは、事業継続の担当部署(Business Continuity team)に専任の従業員(Full Time Employees)が何人いるかを尋ねた結果であり、「1〜2人」という回答が50%を、「3〜5人」という回答が20%を占めている。別のデータでは回答者の大部分が従業員数1,000人以上の大企業に所属していることが示されているので、大規模な組織のBCMを少人数で運営されていることが多いということになる。

この点に関して本報告書では、調査結果を踏まえて、次の3つの要因によって少人数でのBCMの運営が可能になっていると説明されている。

1. 熱心な推進者(champions)、内部のステークホルダー、およびコーディネーターによるサポート
2. BCMプログラムに対するトップマネジメントの深い関与
3. 外部のコンサルタントによる一定期間のサポート

図1は事業継続に関する役割を持つコーディネーター、熱心な推進者、ステークホルダーが何人いるかを尋ねた結果である。これは例えば、BCM担当部署とは別に、各事業部や事業所(工場など)、部署ごとにBCM担当者が決められている場合などだと考えてよいであろう。様々な規模の組織からの回答が混ざっているので何とも言えない面もあるが、何らかの形でBCMの運営を助けてくれる人々が、それなりの人数は存在するという状況が示されている。

画像を拡大 図1. 事業継続に関する役割を持つコーディネーター、熱心な推進者、ステークホルダーが何人いるか? (出典:BCI / Business Continuity Resources Benchmarking Report 2022)

このような人々の重要性は、筆者も実務を通して実感している。筆者の場合は組織のBCMに外部のコンサルタントとして関わっているが、例えば事業影響度分析(BIA)のために多くの部署から情報収集するときや、BCPの文書作成に関する作業を各部署にお願いするとき、演習のシナリオの内容に確認が必要なときなどに、それぞれの部署に協力的な方がいらっしゃれば、作業がはかどるだけでなく、心理的な面も含めてBCM担当部署の負担がかなり小さくなる。BCPを作成するときだけでなく、BCMを組織に根付かせるためにも重要なことである。