2018/06/18
安心、それが最大の敵だ

体操の理論と実践
坪井は明治15年(1882)、リーランドが伝習所や東京高等師範において実際に生徒を指導した実技と著書「新撰体操術」(英文)の体育理論をまとめ「新撰体操書」(金港堂)を刊行した。同書は筋肉発達(スポーツ理論)を目標としたものというよりも身体を正常な健康状態にすることを目的にしたものである。彼は同書を活用しながら全国の学校に出張して体操の普及を図った。
明治18年(1885)4月、坪井は教え子で高等師範教員の田中盛業(1859~1924)と共編著で「戸外遊戯法」(金港堂)を刊行した。同書は坪井自身が言っているように「この法に関して未だかつて一書を著せるを見ず」であり、日本人によって書かれた初の近代スポーツ解説書である。欧米で行われていた戸外遊戯法の関連書籍から主要な内容を選択して翻訳し、それに実際指導していた実技も取り入れて編集したものである。
内容は唱歌遊戯、行進遊戯、競争遊戯、ボール遊戯など21種類で、第17章の「フートボール(フットボール)」をはじめとしてローンテニス、ベースボールが紹介されている。スポーツマンシップやフェアプレーの重要性も指摘している。ここに初めてフットボールが日本語で紹介されたのである。初のサッカー解説書である。坪井の指導により伝習所で「運動会」は始まったのもこの頃であった。「運動会」はたちまちのうちに全国の学校に広がっていく。19年、体操伝習所が廃止となり、同校は東京高等師範に吸収された。坪井は東京師範学校教師(助教諭)となる。34歳。
<付録>明治初期の文明開化の時代から、イギリス生まれの近代スポーツ・フットボールが日本に導入された経緯を略記する。
・明治6年:東京築地海軍兵学寮にて、A.L.ダグラス少佐及び33名のイギリス海軍兵がフットボールを伝える。(軍事)
・明治7年:工学寮(工部大学校、東京)にて、イギリス人講師R.ジョーンズがフットボールを指導。(学校教育)
・明治13年11月:横浜フットボールクラブのオープニング・マッチが実施される。(外国人居留地)
・明治14~15年:地方府県の師範学校の求めに応じて体操伝習所が「蹴鞠」3個を製作供給する。(学校教育)
・明治16年6月:大学予備門の英語教師F.W.ストレンジが「Outdoor Game」を著し、フットボールを紹介する。(学校教育)
・明治18年4月:伝習所教員坪井玄道らが「戸外遊戯法一名戸外運動法」を編著作し、その中でフットボール(蹴鞠ノ一種)を紹介する。(学校教育)
- keyword
- 安心、それが最大の敵だ
- サッカー
- 坪井玄道
- 日本サッカー協会
- 筑波大学
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方