イメージ:写真AC

最近の保育園立地・建物事情

「保育園」というキーワードから、みなさんが頭に描く保育園の外観はどんな感じでしょうか。都市から離れた地域にお住まいの方や、昭和以前にお生まれの方はきっと、平屋か、二階建ての園舎で、遊具や草花や木が育つ幼稚園のような園庭の中で、元気よく遊ぶ園児を想像される方が多くいらっしゃると思います。

一方、都市部にお住まいで、保育園を利用されている保護者なら、商業ビルや、中高層階に位置する保育園、電車や高速道路の高架下の園舎など、園庭がない、また外遊びスペースが確保できないため、公園まで移動することが日課の保育園をご想像されるかもしれません。そしてそのような保育園は最近ではめずらしくなくなりました。

本稿では前者のような保育園を「従来型」、後者を「都市環境対応型」と呼ぶことにします。

かつての認可保育園(法律上の正式名称は保育所ですが、一般に合わせ、ここでは認可保育園と呼びます)の基準では、「園庭なし」「中高層階」「商業ビル内」の形態のものは存在しませんでした。ではいつから、存在し、このような保育園が都市部ではめずらしくない光景になったのでしょうか。少し説明が長くなりますが、保育園の防災を語るにあたり、知っていただきたい部分のみかいつまんでお話ししたいと思います。

2000年(平成12年)3月30日、「保育所設置に係る主体制限の撤廃」が発令されたことで、急速に日本の保育環境が変化しました。

認可保育園は、児童福祉法にもとづく「児童福祉施設」であり、かつて保育所の設置主体については原則、市区町村と社会福祉法人に限定されていました。これに対して、2000年3月30日付厚生省の通知により、保育所の設置主体制限が撤廃され、株式会社、NPO法人など自治体・社会福祉法人以外でも認可保育所を設置することが可能となりました。また、2015年(平成27年)4月から導入された「子ども・子育て新支援制度」により、地域型保育の導入で保育施設の種類も細分化され、さらに複雑になりました。

この背景には待機児童問題がありました。その解消のために、多くの認可保育園設立が必要となり、株式会社やNPO法人の参入を国が後押しするに至ったのです。

自治体ごとに作成される保育園の認可基準は、見直しが繰り返えされ、現在のような「都市環境対応型」の保育園が都市部を中心に急速に増加しました。それに伴い、中高層階に位置する保育園、半地下の保育園、屋外階段のない保育園を認可する自治体が現れました。いわゆる規制緩和です。認可外保育施設に関しては、認可保育園より基準の低い建物が使われている場合が多々見られます。

2014年10月22日の読売新聞は、「4階以上の中高層階にある保育所が全国で400か所以上にのぼることが明らかになった」と報じています。待機児童の解消や敷地の確保、保護者の利便性を考慮した立地を優先すると、中高層階に位置する保育園の開設は仕方がない面もあります。とはいえ、保育施設は、どんな状況下でも子どもたちの安全が確保されていなければなりません。

自治体は適切な保育環境であるか抜き打ちで検査をするなどし、特に安全面において、最低基準・監督基準の厳守にとどまらず、「災害時に適切な避難ができる環境」であるか、専門家を交えてチェックし、問題がある場合には改善指導をするなどの体制を整える必要があると思います。