大企業が抱えるBCPの構造的問題とは(写真:写真AC)

多いか少ないか、災害大国日本において、大企業のBCP策定状況は約7割といわれています。ただ、その内容は企業によってまちまち。超大企業ほど全社横断の統合BCPというものは存在していませんし、初動フェーズのみという大企業も少なくありません。さらにBCPに歴史のある企業ほど、現時点でミスマッチな内容になっているともいわれます。

本来、BCPは会社存続の重大危機を乗り切る手法の一つとして、事業縮退や代替設備、外部の活用をその基本としていました。しかし現在のBCPは、数週間程度の被災をもたらす震災や台風のような脅威に対して、事業単体の災害レジリエンス強化を目的とするかたちに移行してきています。

超大企業に会社全体の横串BCPがないのはこのためです。しかしある意味BCPは、サプライチェーンの発展などを考えると、ステークホルダーや社会の要請により実質的な重要性が以前より増しているかもしれません。

1.現場と経営陣の意識の違い

本連載第13回で、5連続災害への対応が急務とお話しましたが、現在の大企業の危機管理担当部門(現場)の意識として、2030年代発生予想の南海トラフ地震のような迫りくる脅威への対応能力の自己評価は、経営陣が思っているほど高くないように見えます。

これは有事発生時、社長以外は当事者意識の低い経営陣と、危機意識が高くとも能力を不安視している現場組織とで対策本部が構成されるということですから、大きな問題に発展する危険性があるといわざるを得ません。

一般的にBCPは、企業リソースであるヒト、モノ、カネ、ジョウホウ、ブランドの”被災による損失”に対応していくことですが、BCPそのものにも「リソース」としてヒト、モノ、カネ、ジョウホウ、ブランドがあります。

例えば、十数年前に策定した震災対応BCPが存在しているA社は、グループ企業も数社抱えている大企業だとします。数年に一度BCPに対する内部監査を実施していますが、防災訓練ではないBCP対策本部訓練は、コロナ禍もあり、この数年実施されないままです。

このような企業のBCP実体を”リソース”として一つ一つ検証していきましょう。