首都圏企業の最大の問題となるのが富士山噴火の影響(写真:写真AC)

前回は、2030年代に発生する南海トラフ地震の影響を西日本目線で考えました。実際、東京本社企業にとっても南海トラフ地震は対岸の火事ではなく、サプライチェーンの物流BCPを考えると、本社の被災が小さくとも大きな影響を受けることは明らかです。また南海トラフ地震以前に、東京は首都直下地震によって被災し、復旧途上の状態での度重なる被災だということも想定しておかなければなりません。

東京は5連続災害になる可能性

しかし首都圏の問題は、首都直下、南海トラフ3連動と続く、5番目の富士山噴火による影響です。現時点でも火山性地震や大きな噴火に関してはある程度の予測が可能だといわれていますが、南海トラフ地震、東海沖地震が発生した直後1カ月から半年後に予測されるというのが最も短いシナリオです。

東京にとって富士山噴火による最悪のシナリオは、風向きにより火山降灰が東側に拡がるケースです。このケースでは神奈川県で 30センチ、東京でも 5~8センチの降灰が予想されています。たかが 5センチではなく、5センチ降り積もる影響は甚大です。

電気、水道、ガスなどのライフラインは全停止。交通機関も影響が少ないはずの地下鉄を含め全停止。通信も携帯電話やインターネットが全停止。道路交通も身動きができず、航空機の発着もできないため、羽田空港と成田空港は長期に渡り閉鎖となります。

車に降り積もる火山灰(写真:写真AC)

当然ながらスーパーに食料や日用品は一瞬にしてなくなり、地震であれば少なくとも水の配給はすぐに実施されますが、富士山噴火に際しては水を運ぶ手段を含め救援物資そのものを受け取る状況に大きな障害が立ちふさがります。一番やっかいなのは灰を除去するためのリソースが使い難いことで、長期戦を覚悟することになります。

降り積もる火山灰は首都圏機能に甚大な影響を与える(写真:写真AC)

全国に波及すると想定されるのは、公衆インターネットの影響です。東京にあるIX(インターネットエクスチェンジ)が使えなくなると、東日本は迂回して大阪のIXを利用するしかなくなり、大きなトラフィックが大阪IXに集まることで輻輳が発生します。日本全体のインターネットが不活化しかねないことを想定しておくべきでしょう。最悪、脆弱なエリアではテレワークが使えない状況が起こり得ます。