2022/08/24
寄稿>コンプライアンスの実現

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の元理事と大会スポンサーの前会長が贈収賄の容疑により逮捕されたニュースが話題になりました。贈収賄はよく耳にする犯罪ですが、どういった行為が刑事罰の対象となるのか。法律違反を防ぐには、まず法律を理解することが不可欠です。弁護士・公認不正検査士の山村弘一氏に、贈収賄について解説いただきました。
東京弘和法律事務所/弁護士・公認不正検査士 山村弘一
はじめに
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の元理事と大会スポンサーの前会長について、贈収賄の疑惑がもたれ、検察による強制捜査が実施され、また、同人らが逮捕されたとのニュースが話題になりました。報道されているところによれば、元理事が受託収賄、前会長が贈賄の疑いがあるとのことのようです。
贈収賄は、時折、社会を賑わせるニュースとして登場してくるため、ほとんどの方が耳にされたことのある犯罪だと思います。しかし、具体的にどういった行為をすれば刑事罰の対象となってしまうのかという詳細についてまでは、ご存じない方が多いのではないでしょうか。
近時、企業活動におけるコンプライアンス(法令遵守)の重要性が叫ばれているところであり、各企業においては、企業活動が法律に抵触するようなことがないよう細心の注意が払われているはずです。

法律に抵触しないようにするためには、法律によって何が禁止されているのか、どういった行為が刑事罰の対象とされているのかといったこと等について、ある程度しっかりと理解しておくことが不可欠だといえます。このことは、企業において法務に携わっている方々だけではなく、営業等の現場でご活躍の方々にとっても、意図せぬ法律違反を防ぐためにも当てはまることです。
そこで、企業活動にまつわる犯罪についてご紹介していきたいと思います。まずは、いま話題の贈収賄を取り上げてみることにします。
刑法の贈収賄の構造
刑法は、197条から197条の4にかけて7個の類型の収賄罪を規定し、198条において、それらで規定される賄賂を供与等した場合の贈賄罪を規定しています。
そして、7個の収賄罪は、197条1項前段の単純収賄罪が基本類型として規定された上で、残りの6個は単純収賄罪が変形された類型として規定されています。
また、贈賄罪は、その対となる収賄罪を踏まえた規定となっており、収賄罪と贈賄罪とは必要的共犯・対向犯などといわれます。
このため、贈収賄を理解するには、まず、単純収賄罪を理解することから始めなければならないことになります。単純収賄罪を理解することが、贈収賄の理解の基本・出発点になるのです。そこで、今回の贈収賄【前編】では単純収賄罪をご説明します。

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