2022/09/06
寄稿>コンプライアンスの実現

現在も社会の注目を集めている贈収賄事件。いったい、どういった行為が刑事罰の対象となるのか。【前編】では刑法における贈収賄の構造について、7個の収賄罪のうち単純収賄罪が基本類型として規定された上で、残りがその変形として規定されていること、および単純収賄罪の要件について解説がありました。【中編】ではそれぞれの異なる部分について、弁護士・公認不正検査士の山村弘一氏に解説いただきます。
東京弘和法律事務所/弁護士・公認不正検査士 山村弘一
はじめに
前回の贈収賄【前編】では、刑法における贈収賄の構造について、次のポイントをお伝えしました。
・刑法は、197条から197条の4にかけて7個の類型の収賄罪を規定し、198条において、それらで規定される賄賂を供与等した場合の贈賄罪を規定している。
・7個の収賄罪は、197条1項前段の単純収賄罪が基本類型として規定された上で、残りの6個は単純収賄罪が変形された類型として規定されている。
・贈賄罪は、その対となる収賄罪を踏まえた規定となっており、収賄罪と贈賄罪とは必要的共犯・対向犯などといわれている。
・このため、贈収賄を理解するには、まず、単純収賄罪を理解することから始めなければならない。

その上で、単純収賄罪(刑法197条1項前段)の各要件である、①主体「公務員」、②職務関連性「その職務に関し」、③客体「賄賂」、④行為「収受し、又はその要求若しくは約束」、⑤故意について、主な点をご説明しました。
これらの各要件(各文言)の解釈等については、贈収賄罪において共通するものです。そこで、単純収賄罪以外の6個の収賄罪と贈賄罪を理解するためには、単純収賄罪と異なる要件(文言)の部分について理解をすることが必要であることになります。
贈収賄【中編】である今回は、残りの6個の収賄罪と贈賄罪につき、単純収賄罪と異なる部分を中心にしてご説明していきたいと思います(単純収賄罪と共通する要件(文言)については、贈収賄【前編】をお読みください)。
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