公衆衛生の問題として、医学という専門領域からのライフジャケットの啓発も興味深いのですが、さらに、子ども向けのアニメで、ライフジャケットを装着しているシーンが頻発することもまた、海外事例として興味深いのでご紹介します。

例えば、少し以前のアニメとして日本でも放送されたDora the explore(日本名 ドーラと一緒に大冒険)では、ボートに乗るときも、自然区域で泳ぐときも、Life Jacket so we can be safe(ライフジャケット!安全のために!)と主人公や登場人物が叫んでからライフジャケットを装着します。それだけでなく、やや悪役のキツネもいるのですが、悪キャラであるにもかかわらず、必ずライフジャケットを装着する徹底ぶりが素敵でした。悪キャラだって命が大事ですよね! 

以下はDora the explore公式動画ですが、ライフジャケット装着後です。装着シーンの公式動画は、捜索中です。

ちなみに、so we can be safeという掛け声は、ライフジャケットだけではなく、乗り物に乗る際、シートベルトを装着する時にも必ず、発せられています。ライフジャケットとシートベルトが同じ安全装置であることが強調されていて、子どもたちが嫌がったりしないようにアニメキャラが啓発してくれるのは親にとっても助かります。

近年のアニメも同様です。日本でも放送されているカナダのパウパトロールも、ライフジャケット装着シーンが出てきます。

海外児童アニメの定番のひとつにレスキューものがあります。レスキューする人、困っていることを解決するのがクールという価値観の定着に役立っているように思います。特に、パウパトロールは、困っている動物をレスキューします。空や海に対応した乗り物に、動物たちが乗り込み、人間の主人公と協力しながら問題を解決していきます。ちなみに2013年、日本科学未来館で、レスキュー系の元祖と言われるサンダーバード展があったので、乗り物の展示を見ましたが、ライフジャケットは装着していないように見えました。時代の差でしょうか?詳しい方がいたら教えてください。

パウパトロールの日本語版では、主人公が、「ライフジャケット セット!」と言ってライフジャケットを装着します。子ども向けには掛け声があることが、やっぱりツボなのでしょうか? この部分、オリジナル英語版では、Life jacket deploy. と言うセリフです。「展開」や「配置」を意味するdeployを使うことで、特別感を出しているのでしょうか? パウパトロール柄のライフジャケットも販売されているので、日本でもこういうアニメ展開があればいいのにと思ったりします。

以上、海外事情をご紹介しましたが、日本も実は、国や自治体が遜色ない情報をたくさん発信しているのです。けれども王道が知られていないから、冒頭に紹介した誤解が生まれたのかもしれません。日本のコンテンツについては、また次回ご紹介していきたいと思っています。

この記事の読者の皆様は、企業や組織防災のBCPやBCMに詳しい方が多いことと思います。それゆえ、事業継続に必要なのは、その場でのとっさの対応の対策だけでなく、事前の地道な対策と訓練であることは重々承知のことと思います。家族のための危機管理も同様です。川に入るだけでなく、近づくだけでもライフジャケットが必要なことについて次回、深掘りしたいと思いますが、まずは世界の動向を知っていただければ嬉しいです!

 

注1 国土交通省は、平成30年すべての小型船舶の乗船者にライフジャケットの着用を義務化。水中で浮き上がる力が7.5kg以上あること、顔を水面上に維持できることなどの様々な安全基準が定められていおり、国土交通省が試験を行って安全基準への適合を確認したライフジャケットには、 桜マーク(型式承認試験及び検定への合格の印)が付けられる。
https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_fr6_000018.html

注2 厳密には、アメリカ小児科学会はすべての年齢でのライフジャケットを推奨しているのに対し、CDCは、ボートについては全ての人の着用を促し、水辺や水中のアクティビティについては、特に子どもについてライフジャケットの着用を強調しているという違いがあります。