組織にとってESGは、ますますその重要度を高めている。しかも、単なる目標の表明ではなく、実行が問われることになっている。リスクマネジメントしても、ESGに関わる目標の設定から、その実行までを確実にすることが課題になる。表明した目標が未達成であることは、経営のリスクになりうるからである。

リスクマネジメントでEGSに焦点を当てることの価値は、競争上での優位性を生み出すだけでなく、企業ブランドの強化にもつながりうる。しかも、組織メンバーも自組織の社会的な価値を改めて見直すことになり、そうした価値に共感を覚える人材の確保につながりうる。そして、何よりもリスクマネジメントそのものの強化にも結び付くことになる。こうした意味で、企業価値を高めることになる。

既存のリスクマネジメントへの統合

ESGに関連するリスクは、事業展開上で直面すると考えられる他のリスクと切り離して考えるものでも、対処するものでもない。これまでのリスクマネジメント体制に組み入れて、リスクマネジメント体制を強化するものでなければならい。全社的なリスクマネジメントにESGリスクを統合することである。

より具体的には、組織のあらゆる階層、部門でESGリスクに関して対話を実行し、意思決定にそれを生かすようにする(リスク文化の強化)、新たなリスクであるESGリスクを具体的に特定できように、組織としての認識力を高める(リスク洞察力の強化)、リスク遭遇可能性(エクスポージャー)を特定して、リスク対応力を強化するように経営資源を配分する(資源配分)、ESGリスクに対応するために、それらを分析して意思決定を支援する特定の専門能力を強化して、組織的なリスク知能を高める(リスク知能の強化)、そして日常的な業務の遂行においてESGリスクに対処できるよう、中核的な業務慣行にリスク統制を組み込む(業務への統合)ことである。