従業員の健康を守るためには企業による一歩踏み込んだ具体策が必要(写真:写真AC)

今回も引き続き、企業が健康経営を実現するにあたり重要となるポイントを確認します。

健康経営に取り組む法人を顕彰制度によって「見える化」する制度として「健康経営優良法人認定制度」がありますが、中小企業については「健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)」の認定要件[下表参照]が適用されます。この制度の内容を知ることで「健康経営推進のためには具体的に何をすればよいか」が見えてきます。

前回は「3.制度・施策実行」のうち「健康経営の実践に向けた土台づくり」を説明しましたが、今回は「従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的対策」を確認します。

1.従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的対策

自社において健康経営を推進するために求められる、より具体的な施策が評価項目とされていますが、ここではその概要を紹介します。

(1)保健指導

日本人の死因の約5割は生活習慣病(がんや心臓病、脳卒中など)ですが、その予防と早期発見・治療に重要な役割を果たすのが「特定健診(いわゆるメタボ健診)・特定保健指導」です。

生活習慣病の早期発見とともに、生活の見直しにつなげる(写真:写真AC)

「特定健診・特定保健指導」では、生活習慣病のリスクを早期に発見し、その内容を踏まえて運動習慣や食生活、喫煙といった生活習慣を見直すための「特定保健指導」を行い、結果として生活習慣病の予防・改善につなげるという流れです。

企業は、対象となる従業員(40歳以上75歳未満)が特定健診を定期的に受診するとともに、その健診結果を踏まえて必要なアドバイスを受けることができる体制を構築することが求められます。

(2)具体的な健康保持・増進施策

従業員の心と身体の健康を守り、維持していくためには、その実現に必要となる企業側の具体的な取り組みが必須です。次のような他社事例も参考に、対策を検討するとよいでしょう。

【食生活の改善に向けた取り組み】
・社員食堂のメニューにカロリーを表示して、従業員の健康意識を高める
・食生活改善を目的とした料理教室などの社内イベントを開催する
・外部事業者を活用して栄養指導や相談窓口を設置する
・食生活改善アプリの活用を支援する など


【運動機会の増進に向けた取り組み】
・従業員に万歩計を配布、そしてそれぞれの歩数を集計し、個人別、チーム別の実績を発表する
・地域のマラソン大会に参加する場合、参加費やユニフォーム代を補助する
・家族と一緒に参加できる運動会や各種スポーツ大会を開催する
・スポーツジムと法人契約を結び、従業員に利用を呼び掛ける
・定期的に外部のインストラクターを招き、昼休みに健康体操を実施する
・毎朝、ラジオ体操を実施する など


【長時間労働者への対応に関する取り組み】
・従業員のパソコンを定刻にシャットダウンするシステムを導入する
・「水曜日早帰りデー」などを設け、従業員が定時に仕事を終わらせるよう啓発する
・長時間労働の状況を衛生委員会で報告・共有する など