健康経営の実践に向けた土台をつくる
第11回:健康経営の要件(2)

本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2022/10/12
ウイズコロナ時代の健康経営
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
引き続き、企業が健康経営を実現するにあたり重要なポイントを確認します。
健康経営に取り組む法人を顕彰制度によって見える化する制度として「健康経営優良法人認定制度」がありますが、中小企業については「健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)」の認定要件が適用されます[下表参照]。この制度の内容を知ることで、「健康経営推進のためには具体的に何をすればよいか」が見えてきます。
前回は「3.制度・施策実行」のうち「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」を説明しましたが、今回は「健康経営の実践に向けた土台づくり」を確認します。
ここは、自社において健康経営を推進するために整備しておくべき体制や仕組みが評価項目として示されています。
「リテラシー」は、もともと「読み書きの能力」という意味ですが、ビジネスの場面では特定分野の能力や知識を活用する力、という意味で使われることが多く、例えば、ITリテラシーや金融リテラシーという使い方です。
ヘルスリテラシーは、健康や医療に関する正しい情報を入手するとともに、それを理解して活用する能力のことで、この能力が高まれば、従業員の病気を予防すること、そしてさらには健康寿命を延ばすことにもつながります。
まず、従業員に健康に関する正しい知識を身につけてもらうことが重要であり、次の取り組みが考えられます。
・健康や医療をテーマにした研修会を開催する
・社内報や社内ホームページ、またメールマガジンなどで、健康に関する情報を定期的に提供する
・行政が主催する健康づくり講座等への参加を奨励する など
ワークライフバランスというと、「仕事と生活の調和」ということですが、その目指すところは、仕事が順調に進んでいれば私生活においても余裕を持つことができ、また私生活が充実することによって仕事もうまくいくとう流れです。私生活の中には、育児・介護、趣味や自らの学び、さらには地域活動などが含まれます。
従業員の仕事、そして私生活のそれぞれのバランスが崩れないようにするために、企業は次のような取り組みを行うことが肝要です。
・定時消灯や定時退勤(「ノー残業デー」など)の制度を導入する
・テレワーク制度を導入することで、子育てや介護を行っている従業員に働きやすい環境を提供する
・それぞれの従業員のワークライフバランスを実現するために必要な配置転換を検討する
・有給休暇の取得を奨励するとともに、上司が率先垂範する など
上司が部下に、「仕事を早く切り上げて帰ろう」と声をかけるだけではなく、それが実現できる具体的な仕組みが求められます。
ウイズコロナ時代の健康経営の他の記事
おすすめ記事
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方