人口減少社会を支えるためには高齢者の活躍も不可欠(写真:写真AC)

日本では、少子高齢化が急速に進み人口が減少する中、経済社会の活力を維持するためにも、働く意欲を持つ高齢者の活躍が求められています。

実際、2020年の高齢者の就業率(65歳以上人口に占める就業者の割合)は25.1%であり、9年連続で前年に比べ上昇しています。その結果、15歳以上の就業者総数に占める高齢就業者の割合は13.6%と、過去最高の数字を示しています[図1]。

今後も職場における高年齢労働者は増えることが想定されています。一方、高年齢労働者は、筋力や敏捷性などの体力が低下していることが考えられますから、職場における安全配慮の考え方が重要です。

今回は、高年齢労働者について、健康経営の観点から考えます。

1.「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(以下、「高年齢者雇用安定法」)

今後も高年齢労働者が増える背景には、法律の後押しがあります。高年齢者雇用安定法は、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある誰もが年齢にかかわりなくその能力を十分に発揮できるよう、高齢者が活躍できる環境整備を図る法律ですが、その一部が改正され、令和3年4月1日から施行されています。

これまでの高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保が義務づけられていましたが、この改正では、さらに65歳から70歳までの就業機会を確保するため、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務が設けられました。

①70歳までの定年引き上げ

②定年制の廃止

③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)

④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
 a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
 b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
再雇用など、70歳までの就業機会の確保に多様な選択肢を整える(写真:写真AC)

この改正では、それぞれの従業員の多様な特性やニーズを踏まえ、70歳までの就業機会の確保について、多様な選択肢を法制度上整え、企業としていずれかの措置を制度化することを努力義務としていますが、70歳までの定年年齢の引き上げを義務づけるものではありません。