2015/07/10
C+Bousai vol3
鼎談| 地域の課題を「情報」で解決

NHK経営委員 NTT西日本シニアアドバイザー(地区防災計画学会最高顧問)
×
田中行男氏 一般財団法人関西情報センター専務理事(地区防災計画学会理事)
×
筒井智士氏 地区防災計画学会理事事務局長
フェイスブックやツイッタ―などのSNS、さまざまな情報が書き込める電子地図、位置情報が把握できるGPS、危険情報を素早く伝えるアプリなど、東日本大震災以降、さまざまな情報システムが注目を集めている。地区防災計画を進めていく上で、どのような視点で情報システムを取り入れていけばいいのか。同志社大学大学院特別客員教授・NHK経営委員・NTT西日本シニアアドバイザーで地区防災計画学会最高顧問の森下俊三氏、一般財団法人関西情報センター専務理事で地区防災計画学会理事の田中行男氏に、地区防災計画学会理事・事務局長の筒井智士氏が話をうかがい、その課題と方向性を探った。
筒井:私は、今後、日本の社会の在り様を考えていく上で、「地区防災計画」に集約されている3つの言葉の力が重要になってくると思います。それは、地区の「コミュニティ力」、防災の「防災力」、計画の「マネジメント力」です。そしてこれらの力を支えるのがまさに「情報」だと考えています。
特に「コミュニティ力」については、コミュニケーションがあってこそのものです。では、情報ツールがコミュニティを活性化、結束させるためにどうあるべきなのかを、まずは、森下顧問にお伺いしたいと思います。
森下:「地区防災計画」は、東日本大震災が1つの大きな契機になっています。これにより、日本社会の課題が浮き彫りになったと思うのです。それは、地区のコミュニティ力の重要性です。東北地方は、地区としてのコミュニティ力が比較的ありましたが、災害時にいかに地域のコミュニティが大事かということが改めて分かりました。
行政は方針を出しますが、最後に行動するのは住民です。行政に頼るのでなく、その地域で住民がどのように助け合うかが、一番大事です。コミュニティをもう一度作り直す、安全・安心な地域社会を住民が自分たちで作っていくことが、今回の「地区防災計画」の大きなポイントです。同時に、今政府が進めている「地方創生」とも深いつながりがあると思います。
どの地域も高齢化の問題を抱えていて、一人暮らしの老人が増える一方、昼間働いていて夜間しか自宅にいない人が多くなり、地域コミュニティが非常に多様化しています。こうした社会では、何かあった時に地域全体にいかに情報を早く伝えるか、情報を共有しあえるかという課題があるわけです。
他方で、今は情報通信のツールが普及しているので、その場にいなくても情報を伝達したり、受けとることができます。それが証明されたのも東日本大震災で、携帯電話やインターネット、ソーシャルメディア、SNSなどが効果を発揮しました。
C+Bousai vol3の他の記事
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方