内閣官房国土強靭化推進室はこのほど、令和5年4月時点における国土強靱化の民間の取組事例集を公表した。平成27年より国土強靱化に関して先導的な取組を収集し、これまでに705事例を「国土強靱化 民間の取組事例集」として公表しており、今回は国土強靱化に関して先導的な取組51事例を掲載した。事例は「初動体制の構築」「顧客の生活を支える」「普及啓発・人材育成」など7つのテーマごとに整理して掲載した。先導的な取組の概要、新たに取組を行うにあたって参考となる工夫や苦労した点、平時の活用方法のほか、防災以外の効果などの情報を得ることができる。

国土強靭化については、基本計画が今年夏に改定される見通しで、政府は4月7日に開催した国土強靭化推進本部(本部長・岸田文雄首相)で、新たに改定する国土強靭化基本計画骨子案を了承している。

次期基本計画では、「人命の保護」「国家・社会の重要な機能が致命的な障害を受けず維持される」「国民の財産および公共施設に係る被害の最小化」「迅速な復旧復興」の四つの基本目標を設定し、取り組み全体に対する基本的な方針を定めて取り組みを推進する。

基本的な方針としては、従来の「国民の生命と財産を守る防災インフラ(河川・ダム、砂防・治山、海岸など)の整備・管理」「経済発展の基盤となる交通・通信・エネルギーなどライフラインの強靱化」「災害時における事業継続性確保をはじめとした官民連携強化」と、新たに「デジタルなど新技術の活用による国土強靱化施策の高度化」「地域における防災力の一層の強化(地域力の発揮)」を加えた5本柱とする。

このうち、「災害時における事業継続性確保をはじめとした官民連携強化」では、サプライチェーンの強靱化も含め、災害が発生しても民間経済活動が継続できるよう官民の連携を図る方針のもと、①国内におけるサプライチェーンの複線化や工場等の分散など災害等に強い産業構造、②民間所有の施設でも早期に強靱な構造物へ補強可能な支援、③民間施設においても適切な情報伝達と早期避難が可能な支援、④非常電源設備をはじめ民間施設のライフライン確保へ支援、⑤防災投資や民間資金活用、公共性の高い民間インフラの維持管理など官民連携の強化、⑥企業体としての社員に対する防災教育の充実、⑦医療の事業継続性確保の支援、⑧大規模災害時における遺体の埋火葬の実施体制の確保、の具体策が盛り込まれた。