2023/09/04
防災・危機管理ニュース

環境省は、令和3年度から行っている「意識変革及び行動変容につなげるナッジの横断的活用推進事業」において、株式会社サイバー創研及び株式会社電力シェアリングが実施した「災害リスクの理解等の防災に関するリテラシーや、食料・水の備蓄等の災害への備え」に関する実証実験について、科学的根拠に基づく効果が示されたことを公表した。神奈川県内及び北海道内の地方公共団体との連携の下、ランダムで住民サンプルを抽出して比較試験を行った結果、住まいの地域の災害リスクの理解、食料・水の備蓄・確認、家具の配置や警報機の設置、一時避難場所や避難所の把握、家族との集合場所の決定などの項目での改善が統計的有意に実証されたという。
ナッジ(nudge:そっと後押しする)とは、行動科学の知見の活用により「人々が自分自身にとってより良い選択を自発的に取れるように手助けする政策手法」のこと。今回の実験は、調査会社のモニターのうち、 神奈川県内(令和3年度)と北海道内(令和4年度)に居住する各600世帯を対象に実施した。具体的には、地域の災害リスクや最寄りの避難場所などを記載して冷蔵庫など金属面に貼ることができる「マグネットシート」を送付したグループと、送付しない2つのグループ(各300世帯ずつ無造作に割り当て)について、送付4週間後に防災リテラシー等に関する一部記述式の習熟度調査を実施し、回答を比較した。マグネットシートの送付先には、住まいの地域の防災・ハザードマップを見ながら災害リスクや一時避難場所・避難所を記入し、冷蔵庫や玄関等の目に付く場所に貼り付けるよう依頼した。
その結果、一時避難場所や避難所の名称を記述式で正確に回答した割合は、各県ともそれぞれ50%前後、マグネットシートを送付したグループの方が送付しなかったグループより高かった。さらに、地域の災害リスクを記述式で正しく答える割合や、食料を備蓄している割合、水を備蓄している割合なども10%程度の増加傾向が確認された。また、マグネットには直接記載れていない事柄で、地震に備え家具などの配置を工夫している割合や警報器を設置している割合、災害時の家族との集合場所を決めている割合なども増加する傾向が確認されたという。

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