11月30日から新サービス「スペクティ・サプライチェーン・レジリエンス」を提供開始

危機管理情報支援のSpectee(スペクティ:東京都千代田区、村上建治郎社長)は、企業・自治体の防災を主軸に展開してきたサービスをサプライチェーン領域に拡大する。11月30日に新たなクラウドサービスをリリース、12月8日にはサプライチェーン・マネジメントの未来展望をテーマにしたオンラインカンファレンスを開く。

同社の主力サービス「Spectee Pro(スペクティ・プロ)」は、事故や災害の情報をリアルタイムで提供するクラウドサービス。道路・河川のライブカメラや市民のSNS投稿から取得した情報などをAI解析にかけて分類し、気象情報や公的機関の情報と照らして刻々と変わる状況を可視化、デジタル地図に落とし込むなどして配信する。

主に災害対応にあたる自治体のニーズに応えてきたが、ここへきて企業のBCPやリスク管理領域からの引き合いが急増。顧客数が直近3年間で3倍に増え、今年に入って累計980(10月末時点)を超えた。製造業や物流業を中心に、サプライチェーンリスク管理への関心が高まっていることが背景にある。

新型コロナパンデミック収束後、企業のリスク環境は一層複雑化。洪水や熱波といった異常気象が世界中で多発し、戦争・紛争が頻発、国際関係が緊張するなかでテロやサイバー攻撃が絶えない。価値観が大きく変化・厳格化し、予期しないキャンセル事案も発生している。

「新たなリスクが次々に顕在化する不確実性の高い時代、危機の兆候を素早く覚知して柔軟に対応する体制の構築は重要な経営課題」と村上建治郎社長。「なかでも製造業は、自社が無事でもサプライヤーから部品や原材料の供給が止まると生産ができない。しかし自社の管理が及ばない調達先で、想定が及ばない危機の兆候をつかむのは極めて困難」と話す。

サプライヤーの危機をいち早く覚知

サプライチェーン・マネジメントはこれまで、どちらかというと効率化に主眼があった。できるだけ在庫を持たず、調達先や流通プロセスをタイトに管理しコストを落とす。余裕が少ない分、インシデントが起きたときの柔軟性は乏しい。ゆえにリスク管理が重要になるが、予期しないリスクが増えているうえ、サプライヤーが世界に分散している。

同社が新たにリリースするクラウドサービス「Spectee Supply Chain Resilience:スペクティ・サプライチェーン・レジリエンス」(Spectee SCR)は、これまでの「Spectee Pro」のコンセプトを継承。インシデントの早期覚知・可視化・配信機能に、サプライヤーの管理機能と影響分析機能を追加した。

顧客が自社で管理するサプライヤーの情報を登録すると、スペクティがこれをデータベース化。それぞれの拠点の場所、取り扱う製品・部品などをデジタル地図やツリー表示にプロットして可視化する。「どのサプライヤーの拠点がどこにあり、何をつくって、どこと取引しているかが、直感的にわかるようになる」

そしてIoTやSNS、世界のローカルニュースや各種警報、気象データなどからインシデントの発生を覚知すると、サプライヤーのデータベースと照合し、どの拠点で何が起きているかを把握して顧客にアラート、今後考えられる危機や被害を自動分析して配信する。顧客はその時点で、状況確認はもとより、在庫の確保や調達先の切り替えに動くことが可能だ。

「リスクを早く覚知したほうが早く手を打てる。しかし現実には、サプライヤーのインシデントはなかなか気づけません。海外の拠点であればなおさらで、気づいたときには代替調達先を他社に押さえられていたというケースをよく聞く。自社のサプライヤーがどこで何をつくり、止まったときどのような影響が出るのかは常に把握していないといけない」

サプライチェーン領域で認知度を向上

12月8日には、サプライチェーン・マネジメントの未来展望をテーマにしたオンラインカンファレンス「Supply Chain Future Experience(SFX)2023:サプライチェーン・フューチャー・エクスペリエンス」を開く。リスク管理にとどまらず、ECの発展や人手不足の影響、人工衛星をはじめとする最新テクノロジーの可能性など、多面的なテーマでサプライチェーンの未来を議論する。

サプライチェーン・マネジメントの未来展望をテーマに開催するオンラインカンファレンス「SFX2023」

登壇者も企業経営や物流、在庫管理、新技術などさまざまな分野から招へい。大学教授やコンサルタント、スタートアップなど、立場の異なるメンバーがトークセッションを中心にサプライチェーンを語る。「リスク管理はあくまで切り口の一つ。サプライチェーンという大きな領域のなかで当社の認知度を高めることがねらい」と村上社長は話す。

同社の当面の重点は、サプライチェーンリスク管理を中心に製造業・物流業に向けたDXソリューションを強化することと、従来の防災領域のサービスを海外に広めていくこと。10月には新たな機能開発やサービス開発、販路開拓を行うための成長投資として約15億円の資金調達を実施した。

「防災分野での認知度は高まってきたが、さらなる成長に向け、また一つ会社をアップデートしないといけない。サプライチェーンは経営層をはじめ、調達、ロジスティックス、在庫管理などさまざまな部門が関わる領域。幅広い人たちに『スペクティ』を知ってもらいたいたい」と村上社長は話す。

■Supply Chain Future Experience(SFX) 2023
https://supplychain-x.com/