3.企業に求められる備え


前章で述べたように、現在MERS(マーズ)コロナウイルスの感染拡大が懸念されている。もし今後SARSウイルスのように短期間で感染が拡大されるような事態に至った場合、企業として従業員の安全などの社会的責任を果たすとともに、事業継続の確保が必要であるが、そのためには、事前の備えが何よりも重要となる。そこで本章では、企業に求められる事前の備えについてまとめる。

(1)情報収集
報道や以下に挙げるサイトなどを通じて、MERS(マーズ)コロナウイルスの発生状況やWHO、政府の対応等の情報を収集し、感染拡大の際に速やかに対策を講じることが出来る社内の対応体制を整える必要がある。

<MERS(マーズ)コロナウイルスに関する情報が掲載されたサイト>
・国立感染症研究所MERS(マーズ)コロナウイルス関連ページ
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ka/hcov-emc/2186-idsc/2686-novelcorona2012.html
・WHOコロナウイルス感染症関連ページ(英語)
http://www.who.int/csr/disease/coronavirus_infections/en/index.html

(2)備蓄品の準備
感染の拡大につれ、感染対策に必要な備品の需要が増大し、入手困難になることが予想されるため、必要な備品を事前に準備しておく必要がある。

<MERSに対する備蓄品の例>
・マスク
・消毒剤、手洗い石鹸
・うがい薬
・ペーパータオル(使い捨て)
・ゴム手袋(汚物処理に使用。使い捨てのものを用意)
・ビニール袋(汚染されたごみの密封用)
・体温計
・食料、日用品*
*外出自粛要請等が出された場合、同様に入手困難となる可能性がある。

(3)駐在・出張者等社員への教育・啓発
社員、特に海外駐在員・出張者に対しては、発生状況等に関する情報の提供を行うとともに、MERS流行時には渡航や帰国に関する勧告等が発せられる可能性があることを周知する必要がある。また、感染が懸念される場合には予防策を徹底するよう教育・啓発していくことが重要である。現時点ではMERS(マーズ)コロナウイルスに関して、感染経路等具体的なことは明らかとなっていないが、SARSウイルスを含む呼吸器感染症の一般的な対策である、以下の予防策が有効と考えられる。

<MERSに有効と考えられる予防策>
・外出時はマスクの着用を励行する。特に、呼吸器系疾患を有している場合は必ず着用する。・外出後は消毒剤(SARSにはエタノールや台所用合成洗剤が有効とされた)や石鹸を使用した手洗いを徹底する。
・うがい薬を使用したうがいを徹底する。
・トイレ・浴室・台所、ドアノブ等の消毒等の衛生管理を励行する。
・人の大勢集まる場所への外出を避ける。感染が疑われる場合、医療機関への受診、会社への報告、診療結果が出るまでの隔離等必要な対策を講じる。