2024/02/21
令和6年能登半島地震
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/f/6/670m/img_f6e716dac31a2f7f1f00f346e53e52901517348.jpg)
電気設備を製造・販売するパナソニックエレクトリックワークス社(大阪府門真市、大瀧清社長)は、発災時にも製品の製造を止めないサプライチェーンリスクマネジメントに取り組んでいる。重要な製品や部品を整理し、メーカーや製造拠点の詳細な情報まで把握。代替情報を加え、動き出しのスピードアップを実現した。元日に発生した能登半島地震でも素早く対応し、製品製造に大きな影響はなかった。
❶サプライチェーンの情報を全社的に一括管理
・製品や部品のデータベースを構築し、発災時に影響を受ける製品や部品を素早く把握する。
❷発災時に必要な情報を、迅速に抽出できる環境を整える
・優先すべき製品を決めることでデータベース内の登録データを減らし、一般的なパソコンで利用できるシステムにする。
❸部品の供給停止を視野に入れ、代替手段の情報までを登録
・代替手段の確保で対策を先行できる。
未曾有の供給停止
照明や配線器具など、パナソニックの原点である電気設備を製造・販売するパナソニックエレクトリックワークス社(パナソニックEW社)。同社調達センター所長でサプライチェーン戦略部部長を兼任する森下賢治氏は「パナソニックEW社は生活に密着して欠かすことのできない製品を生産し、社会インフラとしての役割を担っています。生産停止に直結するサプライチェーンの途切れを生じさせていけない」と話す。
同社が各生産拠点に委ねていたサプライチェーンマネジメント(SCM)を一新し、全社的に取り組むきっかけになったのは、2020年に起きたサプライヤーの火災事故。中枢部品の供給が停止し、製品製造に大きな打撃を受けた。森下氏は「調達史上、未曾有の大事故だった」と語る。
そこで、当時のエナジーシステム事業部(現:電材&くらしエネルギー事業部)でSCM体制の確立が急務となり、2021年、事業部内にリスクマネジメント推進室を立ち上げた。
着手したのは、各生産拠点が発注している部品などのデータベース整理。推進室を設置する前の準備段階から取り組んだ。部品の発注先である商社だけでなく、部品メーカーとその製造拠点の住所までも登録。理由は、発災時にどのメーカーのどの拠点で、どの部品の生産が止まり、どの自社製品が影響を受けるかを素早く突き止め、対策に動き出すためだ。
データベースの整理を進め、活用するシステムまでを構築。推進室の発足2カ月後には運用を開始した。2021年末にはライティング事業部などを含めたパナソニックEW社の全社的なプロジェクトに発展し、データの拡充を進めた。
昨年4月にはプロジェクトの推進と並行して、サプライチェーンリスクマネジメント(SCRM)の専任部署を、各事業部の調達部門が集まる調達センター内に新設。サプライチェーン戦略部リスクマネジメント推進課がスタートした。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
-
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
-
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
-
-
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
-
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
-
-
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方