2013/09/25
防災・危機管理ニュース
内閣府 特定分野におけるBCPの実態調査を実施
内閣府はこのほど、事業の中断が社会に大きな影響を与えると予想されるライフラインやインフラ事業者など特定分野における事業継続の実態調査の結果を公表した。それによると、指定公共機関や指定地方公共機関では、BCPが着実に浸透する一方で、医療施設や福祉施設ではBCPの策定状況が依然として10%以下と低く、他の特定分野に大きく遅れていることが明らかになった。本調査は平成20年度、22年度に続き3回目。調査対象は全体で5477法人で、計2123法人から回答を得た(回答率39%)
今回の調査では、事業継続の観点から国民の関心が高い医療法人、福祉法人を中心に調査を行った。
調査結果によると、BCPを「策定済み」と回答した割合は、指定公共機関では、前回調査の58.2%(平成22年度)から71.1%(平成24年度)に大きく増加。指定地方公共機関でも、25.0%から31.0%に増加した。
一方、特定分野における一般の法人については、平成22年度と調査母集団が異なるため、単純な比較ができないが、策定率は10.3%(平成24年度)にとどまった。
特定分野の内訳は、医療施設が7.1%、福祉施設が4.5%でいずれも10%に満たない。他の特定分野と比べると、電気業66.7%、通信業40.0%、ガス業40.5%、運輸施設提供業36.7%、鉄道業35.5%、放送業39.4%で、大幅に遅れている実態が浮き彫りになった。
BCP「策定中」までを含めると、指定公共機関は、80.0%(平成22年度)から88.9%(平成24年度)に増加。指定地方公共機関では、32.3%(平成22年度)から42.0%(平成24年度)に増加した。一般法人(特定分野)では、20.8%となっている。


調査では、BCPの策定・推進にあたって不足している人材についても質問。指定公共機関では、「BIA(ビジネスインパクト分析)の実施、ボトルネックの分析などができる分析能力のある人材」、「事業継続計画(BCP)の教育・訓練を企画・実践できる教育能力のある人材」がともに30.6%。指定地方公共機関では、「事業継続計画(BCP)の教育・訓練を企画・実践できる教育能力のある人材」が41.3%で最も高くなっている。
一般の法人(特定分野)においても同分野の人材の不足が45.2%で最も高くなっており、いずれの組織形態でもBCPの教育者が不足している実態が明らかになっている。
また、指定公共機関、指定地方公共機関ともに「事業継続計画(BCP)の自己点検、監査を実施できる監査能力のある人材」(それぞれ22.0%から27.8%、24.2%から28.3%)が平成22年度調査と比較して増加していることも分かった。
このほか、事業継続に関する取組状況については、指定公共機関では、「活動及び計画では夜間・休日の業務時間外における被災対応も考慮している」、「被災時における対応体制を構築している(従業員・職員の安全確保、緊急連絡網、対応責任者の権限移譲順位、要員の参集方法など)」が100%で最も高く、指定地方公共機関と一般の法人(特定分野)では「被災時における対応体制を構築している(従業員・職員の安全確保、緊急連絡網、対応責任者の権限移譲順位、要員の参集方法など)」(それぞれ78.5%、77.4%)が最も高くなっている。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方