イメージ:写真AC

 

データ、コンピュータ、通信などに関する関連法令や規制は世界中で増えるばかりで、まるで津波のように押し寄せては、企業各社に時間的、金銭的な負荷を増やしています。加えて、この一年半ほどは、規制もどこ吹く風とばかりに、生成AIという新しいテクノロジーの辻風が吹き荒れています。規制先進国の集まりである欧州議会も苦労して包括AI規制法案を可決しましたが(2024年3月13日)、適用は2026年になる見通しです。他の国々や地域の規制動向は不透明なままです。

今回は、長年ITテクノロジーに深くかかわる技術者で、連続起業家にして、さらに経営アドバイザーであり、Never Normalという言葉を作られたご本人でもあるピーター・ ヒンセンさんに、テクノロジーの辻風への向かい方をお伺いしたいと思います。

筆者自身も、彼のキーノートスピーチを2019年に聞く機会がありましたが、頭も心も揺さぶられ、とてもハイな気分になったことを覚えております。以下は、今月ISFから公開されたポッドキャストを日本語に移したものですが、なるべくご本人の肉声に近い言葉を選んだつもりです。ただ、1回のブログには少し長いので、2回に分けて掲載します。では、お楽しみください。

(引用: 小見出し、および太字は筆者による)


The Never Normal

Peter Hinssen, innovator and thought-leader 
Steve Durbin/CEO, Information Security Forum
5 March 2024
The ISF Podcast

COVIDのもたらした変化

スティーブ・ダービン  こんにちは、お帰りなさい、今日はスタジオにお越しいただいてありがとうございます。

ピーター・ヒンセン お招きいただきありがとうございます。

スティーブ・ダービン 前回、対談をしたのは、確か2019年でしたね。ダブリンで。COVIDの直前でしたね。

ピーター・ヒンセン そうですね、COVIDの直前のことでした。

スティーブ・ダービン あの時からすると、世界の環境は今や、少し変わりましたね。この3、4年間、何をなさっていたのでしょうか?

ピーター・ヒンセン そうですね、COVIDの間は、実は本当に忙しかったのです。たくさんのウェビナーをこなしました。妙な話ですが、それが楽しかったんです。大勢の人と一緒に部屋にいるのもいいのですが、自宅のすぐ近くで仕事ができるのは実に便利でした。そこで、情熱を傾けているアップルコンピュータの蒐集品を収蔵するために古い教会を購入しました。ウェビナーやレコーディングもできる場所としても、教会があって本当によかったと思います。そうでないと、私の家族は完全に気が変になっていたでしょうから。

スティーブ・ダービン つまり、COVIDを肯定的に捉えていらっしゃるわけですね。では、もしCOVIDのようなことがなかったら、おそらくできなかったであろうような、本当に前向きの行動をとっている企業はあるのでしょうか?

ピーター・ヒンセン そうですね、COVIDについて本当に興味深かったのは、COVIDが流行したとき、多くの人が「これは大事件だ」と思ったことです。そしてパンデミック後は、もしパンデミックから脱却できたとしても、また以前の状態に戻ることを期待していたのです。しかし、そのようなことはもう起こらないでしょう。もちろん、何が起こったかは周知の通りです。パンデミック後、世界はウクライナの戦争に巻き込まれ、経済は完全に狂ってしまいました。そしてインフレが起こり、さらにどんどん変化が起きているように見えます。

企業としても、平和で穏やかな時代にはもう戻れないということを理解する必要があることに、根本的に気づき始めたのではないでしょうか。私たちは変化を加速させなければならないのです。それを私は、”Never Normal”と呼び始めたのです。COVIDのおかげ、あるいはCOVIDのおかげで私たちが手に入れたと思える良いことのひとつは、仕事の未来に加速度がついてきたということです。パンデミック以前のような人事、雇用、業務のあり方は、もはや復活を望むことはできないということを明確に認識する企業が現れているのです。これは、パンデミックが世界にもたらした根本的な変化ではないのでしょうか。