2024/03/28
防災・危機管理ニュース
岐阜県岐阜北警察署はこのほど、Starlink(スターリンク)衛星通信とマイクロドローンを含む複数機の目的別ドローンを活用した災害救助訓練を実施した。ドローン販売・点検業務を手がけ、同署と災害協定を結ぶ昭和テックが実施主体となり、ディープテック領域のシステム開発を行うCasley Deep Innovations(キャスレー)や、ドローン設計・開発を手がけるVFR、Spicy Drone Kitchenが支援に加わって行われたもの。
同訓練では、大規模地震によって倒壊・半壊等の被害が多数発生し、通信が途絶した不感地帯において倒壊の恐れがあるマンションに住民が取り残された状況を想定。救助隊が通信機器やドローンを含む救助パッケージを迅速展開し、外部から直接アクセスすることが不可能な閉域通信ネットワークを確保した上で、小型ドローンによる上空からの建物の倒壊危険性の診断と、人が立ち入ることが困難な危険な状況下でのマイクロドローンによる屋内捜索を行った。
はじめに、2名の人員が現場到着から約5分で衛星通信を閉域化し、映像通信・本部連携を確立した後にドローンを展開。外観診断とベランダからの要救助者捜索のため、ACSL製の国産ドローン「SOTEN(蒼天)」を飛行させ、建物の外観にひび割れや傾きなどの損傷がないか、またベランダ越しに取り残されている要救助者がいないかをチェック。その結果、3階建ての建物12戸のうち2階と3階の計2戸を特定した。
これにより、ここまでの捜索を人員2名が約10分の飛行で行えることを確認した。また、現場から離れた指揮本部を想定した訓練テントに、ドローンからの映像をリアルタイムに伝送し、災害診断の専門家が遠隔でアドバイス可能であることを確認した。
屋内捜索では、上空から「SOTEN」の誘導支援を受けながら、マイクロドローン「SDK」が屋内に侵入。障害物を回避しながら各部屋を探索し、要救助者が倒れているところを発見した。これにより、マイクロドローンによる捜索を人員2名が約5分×2回の飛行で行えることを確認した。また、「SDK」からの映像のリアルタイム伝送により、本部からの指示による捜索個所の伝達や、現場と本部の連携が可能であることを確認した。
そのほか、AI(人工知能)によるオブジェクト解析により、人体の一部・全部・顔識別が可能であり、パイロットだけでなく、補助者や遠隔地の支援者が映像を見ながら対応できることを確認した。
最終的に、現場到着後、安全な位置を確保して約25分で要救助者2名を発見し、救助の様子を遠く離れた指揮本部・専門家・支援者へリアルタイムに伝送し、救助部隊が連携して救助活動を行えることが実証された。
なお、閉域通信ネットワークの確保にあたっては、Starlinkを用いた衛星通信をキャスレー独自の警察・公共専用閉域技術「furehako Guard(フレハコ・ガード)」でハイパー・セキュア・ネットワーク(秘密通信)化。ドローンからの映像は、ENWAの消防・医療等向け現場映像伝送システム(DiCaster)にキャスレーが警察向け独自機能を追加した「DiCaster Police(ディキャスター・ポリス)」により、閉域通信ネットワークを経由してリアルタイムで伝送され、キャスレーの秘密分散システム「furehako(フレハコ)」の技術を用いて、指揮本部等の遠隔拠点との連携がなされた。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
-
-
-
-
-
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方