2013/12/03
防災・危機管理ニュース
日本安全保障・危機管理学会主任研究員
オオコシセキュリティコンサルタンツアドバイザー
和田 大樹
2020年夏にオリンピックが東京へ再びやって来ることが決定し、日本国内における盛り上がりも高まる中、2014年2月にロシア南部の保養地・ソチで冬季オリンピックが開催される。オリンピックといえば世界中から優秀なアスリートが集結し、金メダルを目指して競い合い、また世界中の注目が集まる一大スポーツイベントである。オリンピックの競技に国の代表として参加できることは、アスリートにとっての名誉であり、ホスト国にとっても自らの国の文化や伝統などを国際社会へアピールできる絶好のチャンスとなる。しかしオリンピックを開催するにあたっては、反グローバリズムを掲げる政治団体や少数民族の権利と保護を求める人権団体によるデモや抗議活動、さらには政治的独立や民族の自決を求める武装組織によるテロや犯罪など、多くの治安上の懸念に対処しなければならない。そしてオリンピックの歴史を振り返れば、このような治安上の懸念はいつも付きまとうものであった。ここでは2月に冬季五輪を迎えるソチを中心とするロシア南部に焦点を合わせ、オリンピック開催前後におけるこの地域のテロ情勢について論じるとしたい。
1.過去の世界的なイベントにおける治安上の動向
上述の通り、オリンピックに代表される国際的なイベントは世界中のマスメディアが注目することから、そこで大規模なテロ事件などが発生すれば、その分反響も大きくなる。何らかの政治的目標を掲げテロ事件を実行するテロリストにとって、国際的なイベントは自らの存在を国際社会に示し、強い心理的恐怖を拡散できる絶好の機会なのである。幸運にも2012年のロンドン五輪ではそうしたテロ事件は発生しなかったが、過去においてはミュンヘンやアトランタなどでテロ事件が発生し、北京時ではウイグル民族派の武装組織(東トルキスタンイスラム運動:ETIM)の動きが活発化している。また2010年6月~7月の南アフリカサッカーワールドカップや2010年12月のノーベル賞受賞式などにおいても、それを狙ったかのようなテロ事件が報告されている。下の年表はそれらについてまとめたものである。
過去の国際的なイベントにおけるテロ事件、武装組織の活動 ・1972年ミュンヘン五輪 ・1996年アトランタ五輪 ・2005年グレーンイーグルスサミット ・2008年北京五輪 ・2010年南アフリカワールドカップ ・2010年ノーベル賞授賞式 ・2012年ロンドン五輪 ・2014年ソチ五輪 ?? |
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