2018/08/29
事例から学ぶ

備蓄や訓練を手厚く
歯磨き剤や歯ブラシなど口腔ケア製品の製造・販売大手のサンスター。社屋の建て替えのため本社機能は現在一時的に大阪市の大阪オフィスに移しているが、登記上の本社と主力工場は大阪府高槻市にある。大阪北部地震は会社の中枢を直撃する災害となった。
同社では自然災害に備え初期行動をマニュアル化。(1)社員の安否確認と安全確保(2)業務再開への行動(3)被災地域への支援活動―の3ステップで実施している。地震の場合は震度5強以上で該当地域の勤務者に自動配信され、部門長が返信内容を確認できるようになっている。訓練も最低年1回、工場では2~3回実施している。加熱が不要な食料など備蓄も行っているほか、東京オフィスでは首都直下地震も想定し、いざという時に徒歩帰宅となってもいいように帰宅の方向で12路線に分けて同じ方向の社員同士が助け合えるように顔合わせや、帰宅支援マップや簡易トイレといった携行品を持たせる準備も行っている。発災時は安否確認と社員の安全確保、そして生産復旧に向けた動きとなる。

高槻工場は3交代制による24時間生産体制をとっている。大阪北部地震が発生した6月18日午前7時58分はちょうど夜勤勤務者が帰宅しようとしていたタイミングでもあった。無理な帰宅を引き留めたほか、該当する約1000人の安否確認を実施。最初の10分で6割程度が返信し、3時間程度で全員の無事を確認した。総務部総務グループ課長の佐野敏之氏は「迅速な安否確認とけが人を出さずに避難できたことは訓練の成果。逆に避難後の行動など訓練で想定していないことが明確になり、今後の訓練シナリオに生かしていきたい」と振り返った。危機管理を管轄する総務部では早急に連絡をとり合う必要があり、SNSを活用。電話が通じにくい発災時にも連絡がとりやすく、2016年の熊本地震から利用しているという。発災後3分で、大阪オフィスに災害対策本部を設置。高槻工場や東京オフィスなどすべての拠点をテレビ電話でつないで午後1時には会議を行えた。
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