2018/08/30
AIブームとリスクのあれこれ
■爆買いするクセのある人は要注意
もし今後、世の中に、このような無人AIの店舗があちこちにできたとしたら、私たちの暮らしや行動にどんな影響が出てくるのでしょうか。
まず個人感覚(人にもよりますが)として最も気になるのは、レジでの支払手続きが皆無であることの危うさです。確かにオフィス街の昼休みなどは、コンビニなどのレジの前に並んで待つというのはちょっとした忍耐です。1分でも早く買って早くお昼を食べ終わり、残りの時間をゆっくり過ごしたいと誰もが考えるでしょう。これはこれでイライラは解消されるに違いありません。
しかしその一方で、商品を手にしたらそのまま店を出ていくという行為に"慣れ親しんで"しまった時がこわい。この仕組みの導入にはけっこうなお金がかかるでしょうから、首都圏の駅の改札が一斉に自動改札に切り替わったように、短期間にすべてのお店がこの方式に変わることはないでしょう。オフィス街の無人ショップに通い慣れた人が、もし家の近所の従来型のお店でモノを買ってうっかりそのまま店を出たら…。後ろに手が回ってしまう人が続出するのでは、と余計な心配をしてしまうのです。
また、今のところ無人化はキオスクやコンビニのようなこじんまりとした店が対象らしいのですが、特定の業種の枠を超えて他のいろいろな形態や、より大きな規模の店に広がりはじめたりすれば、別のリスクも考えられます。例えば家電製品や衣料品、カー用品などを扱う量販店の無人化。昨今は通販サイトで買いまくり、家の中が商品であふれかえっている人もいると聞きます。そんな人たちは無人量販店の恰好のターゲットにもなり得るでしょう。注意しないと月に何十万円も引き落とされている明細が届いて驚くことになるかもしれません。お金を使った感覚の残らない生活には、とくに庶民にとっては大きなリスクが伴います。
■消費者よりも企業側のメリットの方が大?
一方、こうしたAIシステムの投資に力を入れる企業の側からすれば、単に消費者の利便性を考えてのことではなさそうです。より現実的なメリットを期待してのことに違いない。
この種の無人システムの導入を検討する店側の一番大きなメリットは、言うまでもなく「人手不足の解消」と「人件費削減」でしょう。お店を営む会社にとって無人AIショップは大きな魅力です。もっとも雇用者の視点で言えば、人手不足の解消にしても人件費削減にしても、人間はいらないことに変わりはないので、このAIシステムの導入によって相当数の雇用が失われることになります。
しかし困るのはAIに仕事を奪われた従業員さんだけではありません。消費者の私たちだって困る。例えばファーストフード店。無人の店内に入り、メニューを選べば即座にベルトコンベアーに乗って出てくる牛丼やカレーライス。「いらっしゃいませ」も「ごちそうさま」もない。文字通り黙ってカウンターの前に座り黙って食べて黙って出ていく。養鶏所の自動給餌装置の前に座っているみたいな感じでしょうか。食欲はそそられず、心の満足感も得られません。
災害が発生した時はどうなるのでしょうか。地震、火災、暴動、テロなどが起これば、無人ショップは人がいないだけに恰好の攻撃対象になるかもしれません。急いで自動シャッターを下ろしたぐらいではダメです。あっという間に全商品がやられてしまう。あなたのスマホに無人ショップ用アプリを狙ったウイルスが侵入したら、どんなことが起きるでしょうか。もはや想像もつきません。
世の中、人が介在することで思いもよらないリスクが生じることがありますが、人が介在しないシステムというのは、それ以上に未知のリスクが潜伏していると考えた方がよさそうです。次回は無人化AI技術の象徴でもある「自動運転車」のリスクについて考えてみましょう。
(了)
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