2024/07/20
防災・危機管理ニュース
木原稔防衛相は19日の記者会見で、海上自衛隊員による潜水手当の不正受給問題で4人が逮捕されていたことについて、約8カ月間報告がなかったと明らかにした。自民党内では「シビリアンコントロール(文民統制)の問題」(国防族)との懸念が出ている。防衛省・自衛隊では不祥事が多発しており、与野党から木原氏の進退を問う声が広がっている。
防衛省は12日に、「特定秘密」の不適切管理問題、食事支給対象外の隊員による不正飲食、内部部局でのパワハラ事案と合わせ、潜水手当の不正受給で潜水士ら65人の懲戒処分を発表した。この際、昨年11月に自衛隊の警察に当たる警務隊が4人を逮捕していたことには一切触れず、処分日も一部誤りがあった。不正総額も実際より最大約1000万円小さく公表していた。
木原氏は19日の会見で、逮捕については18日深夜に秘書官から報告を受けたと説明。内局の人事教育局が情報を伝えていなかったとし、「大臣にしっかりと報告するのが文民統制の要諦だ。守られていない恐れがあれば、由々しきことだ」と批判。経緯を検証する考えを示した。
防衛省では海自の潜水艦修理に絡む川崎重工業から隊員への金品供与や飲食接待の疑惑も判明し、特別防衛監察に着手したばかり。結果がまとまるには「少なくとも半年はかかる」(同省幹部)とみられ、幕引きは遠い。
木原氏は辞任を否定し、「再発防止策をしっかりと取る」と主張。林芳正官房長官は19日の会見で「国民からの信頼回復に全力で当たってほしい」と擁護し、公明党の山口那津男代表も「実態解明、再発防止に全力を尽くすべきだ」と語った。
噴出する不祥事を受け、自民幹部からは「責任は役人だけでなく上(木原氏)までいくのでは」との見方が浮上。石破茂元幹事長(元防衛相)は17日のラジオ番組で「責任は政治家が負うべきものだ」と言及した。
与野党は近く衆参両院の委員会で閉会中審査を行うことで合意した。野党は木原氏の責任を徹底追及する構えで、立憲民主党の泉健太代表は19日の会見で「指導力が足らないということであれば辞任もあり得る」と強調した。
〔写真説明〕記者会見する木原稔防衛相=19日、防衛省
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方