2014/05/20
防災・危機管理ニュース
NTT東日本「Bizひかりクラウド 被災者生活再建支援システム」
東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)は6月20日から、自治体が行うり災証明書発行などの被災者生活再建を総合的に支援するサービス「Bizひかりクラウド 被災者生活再建支援システム」の提供を開始する。
システムは建物の半壊・全壊などの被害状況を、フローチャート化した調査票により、自治体の職員が容易に判別することができる「建物被害認定機能」などを持たせることで、自治体は大規模災害発生時に被災者に対して迅速にり災証明書を発行でき、被災者は支援金、義捐金、保険金、仮設住宅の手配等を受けやすくなる。京都大学防災研究所の林春男教授らが過去10年にわたり、新潟中越地震や東日本大震災などの被災地で実証・研究した結果に基づいて開発した。
同社はこれまでクライアント・サーバー型として同様のシステムを東京都豊島区、京都府京都市、神奈川県茅ケ崎市など全国10の自治体に提供してきたが、今回システムをクラウド対応させることで初期費用等が抑えられるほか、システム管理負担が軽減されるなど、自治体が導入しやすくした。
総合行政ネットワークLGWAN(※)のネットワークを利用することで、セキュリティの安全性も担保した。GIS(地図情報)に被災情報、住民情報などと重ね合わせて視覚的に表示することも可能。料金は自治体の人口が1万人以下で月額2万円~(税別)。人口に応じて料金が変わり、その他に初期費用も発生する。
都道府県単位での一括導入時におけるクライアント・サーバー型とクラウド型の混在提供や、複数自治体による共同利用など、自治体の要望や実態に合わせた提案もできるという。
※LGWAN…正式名称は「総合行政ネットワーク」。地方自治体のコンピュータネットワークを相互接続した広域の行政専用ネットワークで、都道府県、市区町村の庁内ネットワークが接続され、中央省庁の相互接続ネットワークである霞が関WANにも接続されている。

<主な機能>
1. 防災設備管理・被害状況管理機能
平時には、物資情報や避難所情報をGIS上に登録し、可視化・集計することで、発災前の物資や避難所の準備に利用できる。災害発生後は、住家被害、人的被害、ライフライン被害などを登録・集計でき、避難所の不足物資等の情報共有が可能だ。
2. 建物被害認定機能
り災証明を行うにあたって必要な建物被害調査票を出力できる。フローチャート化した建物被害調査票により、建物の全壊や半壊等の被害状況を公正に判断することができ、専門知識のない自治体職員でも建物被害認定を実施できる。現在は震災と水害の2つの建物被害調査票を出力できる。
3. り災証明書発行機能
建物の被害状況と、住民基本台帳に基づく住民情報、課税台帳に基づく家屋情報をGIS上で統合することで、迅速にり災証明書を発行できる。自治体職員が被災者と1つのシステムを参照しながら合意形成することができるので、隣家のり災証明書を発行してしまうなどのミスを防ぐことができる。
4. 被災者台帳管理機能
仮設住宅の手配状況や支援金の給付、税や公共料金の減免など、り災証明の発行内容に応じて庁内横断的に実施する被災者支援の情報をデータベース化し、管理することができる。住民基本台帳と照らし合わせることが容易になり、支援が行き届いてない被災者やり災証明の申請を行っていない住民を特定でき、自治体からアプローチすることができる。
<ニュースリリースより>
「Bizひかりクラウド 被災者生活再建支援システム」の提供開始について(NTT東日本)
http://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20140520_01.html
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方