2014/06/10
防災・危機管理ニュース
(3)地方(国の出先機関、都道府県等)も含めた関係機関の連携強化策
事業者や業界団体が前記の取り組みを推進するためには、国がそれを後押しすることが求められ、そのために国や地方公共団体が行うべき連携強化について以下の項目を挙げている。
①「石油コンビナート等災害防止3省連絡会議」の設置
a)石油コンビナート等災害防止3省連絡会議を設置し、定期的に開催。事故情報等を共有。
b)重大事故が発生した際にも連絡会議を開催し、原因調査や再発防止策について3省の情報・取組を共有
c)基準の見直しや人材育成に関わる取り組みの政策動向についても共有
②自主保安の徹底に向けた連携
a)「危険物等事故防止安全憲章」も踏まえ、3省共同で事業者の保安向上への取組促進と行動計画策定をコンビナート関係の業界団体に要請。連絡会議で継続的にフォロー。
b)事業者の事故防止への取組を促進するため、自主保安向上に資する支援機関の取組を普及。
③事故情報の共同発信等による事故情報活用の推進
a)連絡会議で共有する事故情報等を、3省共同で関係業界に発信
b)国、支援機関がとりまとめ、公開している事故データの充実と3省共通のホームページを設けることによる利便性向上
④石油コンビナート等防災本部の機能強化
a)県知事を本部長とし、関係機関等の職員が構成員となっており、一元的な連絡調整を行う組織である石油コンビナート等防災本部の機能の強化を図る取組を実施(外部のアドバイザーの活用や地方公共団体間の担当者会議の開催)
b)石油コンビナート等防災計画の見直し等では、他の防災計画の内容や先進事例等を参考とする取り組みを促進
⑤様々なレベルでの連携強化
a)平時における防災訓練、事故発生時における情報共有・調査段階での事業者ヒアリングの共同実施等、国、県、市の連携強化。
b)支援機関も含めた調査機関における情報交換等を行い、連携を強化。
3.安全管理システム(Safety Management System)を取り入れた保安向上の取り組み
前節表1及び2で示される課題や対策は、「経営トップの保安への強いコミットメント」から「防災に関する各種取り組み」まで多岐にわたっている。これらの多くの課題・対策に機能的に対応するためには体系的な取り組みが有効であると考える。安全管理に関する活動を体系的に進めるためには、欧米の多くの先進企業や日本の高圧ガス保安法に基づく認定事業所を中心に導入されている安全管理システムが参考となる。本節では安全管理システム(Safety Management System)における重要事項に触れることによって事業者が取り組むべき課題遂行のポイントを解説する。図1に安全管理システムの概要を示す。
(1)安全管理システムを効果的に運用するための重要なポイント
本項では、安全管理システムを効果的に運用するための重要なポイントについて解説する。
①安全方針
a)安全方針には、安全管理システムの各項目に必要とされるリソースを準備することを示すとともに、高いレベルの安全を達成することへの経営層のコミットメントを含めなければならない。
b)安全方針は、重大事故防止に関する総合的な目標と行動方針を示し、安全管理システムにより継続的な改善を推進し、安全管理レベルを向上させることを述べたものでなければならない。
c)安全方針の策定にあたり、以下の事項を考慮する必要がある。
・組織・人員及び責任体制
・リスクアセスメント(ハザード解析とリスク評価)
・運転管理
・変更管理
・緊急時対応計画
・パフォーマンス測定
・監査とマネジメントレビュー
d)安全方針は従業員等に十分に理解されることが重要である。そのためには、示された方針に基づき、安全管理活動が実施され、その活動状況がモニターされ、評価されるという、一連のPDCAサイクルによる活動が安全方針の中で明確に意識されていることが重要である。従業員等に対し、認識された重大な危険(Major hazard)がリスク評価され、リスクが管理(保有、除去、軽減、回避、移転など)されていることを示すことになる。
e)安全方針の決定及び実行に際しては、必ず従業員(必要に応じて協力会社等)が参加していることが必要である。また、協力会社には、危険性の認識と安全方針を実行するために、必要な教育訓練の機会を提供する。
- keyword
- テロ・大規模事故
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/05/05
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方