各地の被害状況の推移を「見える化」すべき

27日に噴火した長野と岐阜の県境にある御嶽山は、現在も噴火が続いている。安否確認がとれない方々の一刻も早い救助が求められる一方で、今後、噴火活動が更に活発化すれば、各地の降灰被害などについて、地元自治体、県、国、関係機関らが協力・連携して対応にあたることが求められる。その際、重要になるのが情報共有である。

大気汚染や人的被害がどのような傾向で広がっているのか、どのような農作物にどのくらいの影響が出ているのか、ライフラインや河川など自然環境への影響の広がりはどうなっているのか…、こうした情報が適時、災害対応にあたる主体間で共有されなくては、効率的な災害対応は進められない。また、現状でどのくらい対応が進んでいるのか、対応状況の変化も重要な共有すべき情報になる。

テレビやラジオの放送からは、市町村ごとの被害状況が断片的に入ってくるため、発災当初からの全体の被害状況・対応状況の推移が把握しにくい。特に、日常的に、地元消防や警察、自治体、国が連携するようなことはほとんどないし、現地自治体ごと災害対策本部が立ち上がっているため、情報共有は、多機関が連携する上で最重要の課題になる。その際、役に立つのがCOP(状況認識の統一:Common Operational Picture)と呼ばれるものだ。被害状況の変化や、対応状況の変化を、色分けして「見える化」することで、誰でも簡単に作成することができる。

被害状況などを色分け

欧米の災害対応や、東日本大震災でもCOPは活用されている。
3.11で、岩手県沿岸部のCOPの作成にあたった京都大学防災研究所の牧紀男教授の資料を参考に、簡単なイメージを作成してみた。


まず、縦軸に「〇県〇市」といった具合に、自治体名を書く。横軸には、被害の状況を把握したい項目を書く。例えば、降灰量、大気汚染、健康被害、ライフライン、農林業…。ポイントは、今後発生しそうな被害についても網羅的に整理しておくことだ。それにより、被害を見落とし、対応が後手に回ることを防げる。

その上で、市町村ごと、項目ごとに、被害状況を色分けで示していく。例えば、被害が確認できない状況なら「黒」、かなりの被害がでているなら「赤」、中ぐらいの被害なら「黄」、少しだけ被害がでている状況なら「緑」、被害がないなら「白」。経過時間ごと、この図を作っていけば、現状、どのような傾向で被害が拡大しているか、あるいは収束に向かっているかが、ひと目で把握できるため、連携する上での目的・目標の設定や、戦略に関する合意形成が容易になることが期待される。

もちろん、必ずしも紙上に示す必要はない。GIS(地理情報システム)などを活用して、地図上に被害項目ごとレイヤー分けすればさらに使い勝手はよくなるかもしれない。

災害対応においては後手に回らないことが大切だ。COPもそのための1つのツールである。

(リスク対策.com編集長 中澤幸介)

12月3日に災害対応を早める「状況認識の統一」手法解説セミナーを開催します。
http://www.risktaisaku.com/sys/seminor/?p=752