2025/01/22
防災・危機管理ニュース
トランプ米大統領の就任を受け、日本企業では対米投資戦略に関する警戒感が高まっている。トランプ氏は、脱炭素化の推進をはじめとしたバイデン前政権の看板政策からの転換を強調。世界経済への打撃に懸念が強い高率関税をメキシコなどに課す方針を表明した。日本企業は製品供給網の見直しなど対策の検討を急ぎ、視界不良の中でも成長機会を探っていく構えだ。
日本企業にとって最大の懸念事項は、トランプ氏が大統領選挙中から宣言していた高率関税の導入だ。同氏は就任直後、2月1日からメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を課すことを検討していると表明。日本を含む一律関税の導入はなお不透明だが、米国市場をにらんだ投資には「コスト高が影響してくる」(森トラストの伊達美和子社長)との懸念は根強い。
米ボストンコンサルティンググループは、トランプ氏が目指す中国に60%、メキシコ・カナダに25%、その他の国に一律20%の関税を適用した場合、輸入費用増は中国からが2107億ドル(約33兆円)、日本からは237億ドル(約4兆円)と試算。影響が大きい自動車や電子機器などの製造業では関税回避へ米国での生産強化など供給網見直しを検討する企業も増えてきた。
一方、トランプ氏は就任するや否や、気候変動対応の国際枠組み「パリ協定」再離脱や電気自動車(EV)普及策撤回などを矢継ぎ早に打ち出した。EV普及の減速はハイブリッド車に強みを持つ日本のメーカーには追い風との見方もあるが、再生可能エネルギー市場拡大などを見込んでいた企業は投資戦略の練り直しも迫られそうだ。
新政権への懸念は脱炭素にとどまらない。反ワクチン論者のケネディ氏が厚生長官候補となったことで「北米製薬会社の投資が先送りになりつつある」(島津製作所の山本靖則社長)といった影響も聞かれる。バイデン前大統領が阻止を表明した日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収に対する新政権の姿勢も注目される。トランプ氏が買収阻止の方針を転換しなければ、対米投資に二の足を踏む企業も増えそうだ。
もっとも、4年間で1000億ドルの投資計画を公表したソフトバンクグループのように、新政権との関係構築を着々と進める企業も少なくない。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、米国でロビー活動を加速する企業も増えているという。
(ニュース提供元:時事通信社)
- keyword
- 米国
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
経営層に響かせるサイバーセキュリティロジック
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方