2025/02/03
防災・危機管理ニュース
【ベルリン時事】ドイツの保守野党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が、不法移民対策で極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と協力したとして、「政界のタブーを破った」と批判を浴びている。23日の総選挙に向けてCDU・CSUが支持率首位を保っているが、選挙戦終盤に来て各政党の支持率が変動する転機となる可能性がある。
ドイツでは昨年12月にクリスマスマーケットに車が突入し、先月も子供がナイフで切り付けられるなど、移民的背景を持つ人物による殺人事件が相次ぐ。難民政策の見直しを求める世論の高まりを受け、CDUは国境管理の厳格化を求める決議案を連邦議会に提出。少数派の与党が反対する中、反移民を掲げるAfDの賛成票を受け入れて、1月29日に採択にこぎ着けた。
決議を主導したメルツCDU党首は、AfDの手を借りる格好になったことは「遺憾だ」と述べつつ、不法移民・難民問題に対する与党の行動力の欠如が招いた結果だと釈明。意図的な協力を否定した。
ただ、「タブー破り」に党内からも批判が出た。2015年に難民が押し寄せた際に寛容政策を導入したCDUのメルケル前首相は「誤りだ」と異例の声明を出した。
1月31日にはCDU会派が提出した移民の流入制限を目指す法案が僅差で否決された。決議案の採択で賛成票を投じた一部議員が棄権や欠席を選択したためだ。メルツ氏の強硬姿勢は右派や浮動票の取り込みを図ったものだが、中道層の離反を招く恐れが露呈した。
総選挙ではCDU・CSUが首位を走り、AfDは2位につける。いずれの党も単独過半数には届かず、CDU・CSUが支持率3、4位を争う中道左派・社会民主党(SPD)、環境政党・緑の党のどちらかと連立を形成すると見込まれている。
しかし、SPDを率いるショルツ首相は独メディアとのインタビューで、メルツ氏がAfDと連立を組む可能性を否定できないとの見方を示し、「もう彼を信用できない」と嘆いた。勢いづくAfDが、反極右で一致していた伝統的な主流派政党の分断を誘った形となった。
〔写真説明〕ドイツの保守野党キリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首=1月31日、ベルリン(ロイター時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

- keyword
- ドイツ
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方