第16回 国連・イギリス・EUの排出量取引制度の動向
排出量取引制度のしくみと動向を紹介

島崎規子
大学関係の主たる内容は、駒澤大学経済学部、城西大学短期大学部、城西国際大学経営情報学部大学院教授などを歴任し、同大学定年退職。城西国際大学では経営情報学部経営情報学科長、留学生別科長などを務めた。大学以外の主たる内容は、埼玉県都市開発計画地方審議会委員、財務省独立行政法人評価委員会委員、重松製作所監査役などを務めた。
2025/03/06
環境リスクマネジメントに求められる知識
島崎規子
大学関係の主たる内容は、駒澤大学経済学部、城西大学短期大学部、城西国際大学経営情報学部大学院教授などを歴任し、同大学定年退職。城西国際大学では経営情報学部経営情報学科長、留学生別科長などを務めた。大学以外の主たる内容は、埼玉県都市開発計画地方審議会委員、財務省独立行政法人評価委員会委員、重松製作所監査役などを務めた。
国連が認定する排出権の源泉は、クリーン開発メカニズム(CDM: Clean Development Mechanism)です。イギリスの排出量取引制度は、2002年4月より実施されています。EUの排出量取引制度は、2005年1月に導入され、開始時は25のEU加盟国が参加し、その後2007には28カ国、2013年には31カ国が参加しています。この制度は、EU独自のCO2排出量制度の国際標準化を目標としている点が特徴です。第15回に引き続き、国連、イギリス、EUの排出量取引制度のしくみと動向を紹介いたします。
各国の排出量取引制度の主な動向(一部)を、開始順で紹介しますと、図表1のとおりです。
図表1は、1997年国連が、クリーン開発メカニズムCDM制度による温室効果ガス排出権の管理システムを創設してから、2024年までの各国の排出量取引制度の主な動向の一部を示しています。世界の国が、積極的に排出量取引制度を採用していることがわかります。
国連が認定する排出権の源泉は、クリーン開発メカニズム(CDM)です。CDMは、1997年12月京都議定書第12条に定められた制度で、温室効果ガス排出削減を補足する京都メカニズムの1つです。これは、温室効果ガス排出削減義務上限のない途上国において、排出削減プロジェクトを実施して、その結果生じた排出削減量に基づいてクレジットCER (Certified Emission Reductions) が発行されるしくみです。
すなわち、先進国と途上国が共同で排出削減事業を実施し、その削減分を投資国(先進国)が自国の目標達成に利用できる制度であり、その成立には、国連の認可が必要となります。CDM理事会は、CERの自主的取り消しを推奨して、簡易的な取り消し手続きが可能なオンラインシステムの構築と運用を実施しています。排出権登録のしくみは、図表2のとおりです。
国連は、地球温暖化防止の国際的な枠組みである京都議定書に加盟する約170カ国が排出する温暖化ガスの量を登録する国際取引ログ(ITL :International Trade Log)と呼ばれるシステムを2007年5月に稼動させています。
国連の温暖化ガス排出権の管理システムは、図表3に示すとおりです。
図表3では、国連の取引ログシステム内に、自国の排出量を管理する登録簿を加盟国が作り、登録簿のなかに政府や民間企業が個別に口座を設けて、排出権を売買することが示されています。
日本は、議定書で約束期間(2008年から2012年)に温暖化ガス排出量を1990年比で6%減少しなければならないため、このシステムを介した排出権取引を利用しています。また、EUもこのシステムに参加しています。国連は登録された排出量で、各国が排出量削減の目標を達成しているかを判断します。国連のCDM制度の概要は、図表4のとおりです。
環境リスクマネジメントに求められる知識の他の記事
おすすめ記事
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方