偽情報の防止には政府の介入やむなしか?
第83回:情報環境の激変で顕在化するリスク(4)
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2025/03/17
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
これまで、情報環境がグローバル社会で大きく変化しようとしていることを伝えてきた。今回はまず、その根拠となる客観的事実を示していきたい。代表例は、世界的激震の震源でもある米国トランプ新大統領の発言と大統領令であろう。
トランプ氏は就任演説において、前バイデン政権の政策批判として「自由な表現を制限する連邦政府の数年にわたる不法で違憲な試み」「政府による全ての検閲を即時に停止する大統領令に署名し、自由な表現を米国に取り戻す」という主旨の発言を行った。
そしてその後に署名された大統領令は「SNS上の言論に政府が介入することを禁止。過去の検閲行為を特定し、是正する」というものであった。
この動きを先取りして動いたメタ社は「第三者機関による投稿内容のファクトチェック制度を米国で廃止する」と発表。これに対しバイデン前大統領は本年1月10日に「ファクトチェックをせず、差別に関することを一切報じないのは米国的ではない」「真実を語ることは重要だ」と言ってメタ社の動きを「恥ずべきことだ」と批判した。
この二つは、これまでの拙稿でも言及してきたが、ものの見事に真っ向から対立する論旨となっている。
冷静に比較してもらいたいが、バイデン氏の論は、目的(ファクトチェック)のために政府が介入し情報統制を行うべきということであり、トランプ氏の論は、どんな理由であろうと(自分自身への批判であろうとも)政府が情報への介入・検閲を行うべきではないという真逆の論である。
筆者自身の考えはこれまでも述べてきたが、あくまで情報環境とは自由な空間であるべきとの考えは揺るがない。しかし、これに関してはさまざまな反論もあることは承知している。そこには、それなりに論理的な主張もある。
その論理構造を筆者の理解で簡単に述べると、デマの拡散による差別主義の助長やヘイトなどの攻撃的発信が危険性を帯びてしまうことを最優先の問題として、ポピュリズム的な危険性も高まるので、政府の一定の介入はやむを得ないというものだろう。確かに一理はある。
しかし、そのようにして介入する政府が健全であるという民主的抑制装置が効かないと、むしろ危険性が高まってしまう。政府の介入は、政府が善良で賢人の集まりであって初めて成立し、そうでないと悪意ある情報統制、自己都合での異論封じ、自己にポジティブな情報の拡散という情報操作を抑制できない。
せっかく民主主義で三権分立などの概念がありながら、情報という第四の権力に対する向き合い方が、情報を生業とする立場からは、専制政治的志向に偏っていると思えてしまうのだ。そして何より、今回の米国大統領選挙で米国民は民主主義に則った選挙でトランプ氏を選択した現実は揺るがないのである。
再考・日本の危機管理-いま何が課題かの他の記事
おすすめ記事
防災は面白くないと広がらない
地震が起きたとき、スマートフォンに通知された情報を頼りに避難を判断することが多いだろう。緊急地震速報の情報から、いまどのように動くべきかを判断できる、そんな身近な危機管理を習慣づけた1 社が、アールシーソリューション(東京都新宿区)だ。2010 年に提供開始したスマートフォンアプリ「ゆれくるコール」は、緊急地震速報を受信できるアプリとして多くのユーザーが利用している。代表取締役の栗山章さんは、数多くのユーザーに防災の重要性を広めてきた一方で、ビジネスとして成り立たせる難しさにも直面してきたという。これまでのサービス開発の経緯や、防災ビジネスへの価値観を聞いた。
2026/09/09
被災施設への再入場判断「戻ってはいけない」では解決しない避難後の問題
大地震が発生し、安全な場所へ避難して一息つくと、人々には「ひとまず危険のピークは過ぎた」という根拠なき安心感が芽生える。そして、さまざまな理由で「避難してきた場所に戻りたい」といった気持ちが生じる。しかし、被害がどの程度なら戻ってよいのかについての明確なルールや事例は、どこを探してもあまり見当たらない。 国には応急危険度判定という仕組みや、施設管理者が建物を緊急点検するための指針などもある。が、これらは避難直後の「戻りたいニーズ」に応える仕組みではない。ここに、避難直後の「再入場」という古くて新しい問題がある
2026/09/09
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/08
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/09/07
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方