2025/03/18
防災・危機管理ニュース
14人が死亡、6000人以上が負傷したオウム真理教による地下鉄サリン事件の当日、次々と訪れる被害者約640人の治療などに追われた聖路加国際病院(東京都中央区)の元救急医で、日本中毒情報センター(茨城県つくば市)の奥村徹理事(62)が取材に応じ、当時の様子を振り返った。原因不明のまま、手探りの対応に追われ「恐怖を覚えた」と話した。
「地下鉄で爆発事故が発生した」と東京消防庁から病院に一報が入ったのは1995年3月20日午前8時16分。病院は築地駅から約400メートルの距離にあり、救急車やタクシー、徒歩で次々と被害者が訪れた。「息が苦しい」「目が痛い」と訴える人が相次ぎ、心肺停止状態の人も。「一瞬目の前が真っ暗になるような、地の底に引きずり込まれそうな恐怖を覚えた」。病院は通常診療を取りやめ、全面的に被害者を受け入れる態勢を取った。
「私は大丈夫でしょうか。このまま死ぬのでしょうか」。必死で訴えた女性の顔が忘れられない。「大丈夫。心配しないで」と伝えるのが精いっぱいだった。「爆発事故」のはずだったが、被害者にやけどなどの外傷はなく、瞳が収縮して暗くなる縮瞳の症状があった。「何かがおかしい」と違和感を覚えた。
原因は何なのか。前年6月の松本サリン事件で被害者を治療した信州大付属病院(長野県松本市)の医師や、応援に駆け付けた自衛隊中央病院(東京都世田谷区)の医師から、サリンに関する情報提供があった。
縮瞳を抑える硫酸アトロピンに加え、有機リン中毒に使われる解毒剤「PAM(パム)」を投与した。被害者の容体が安定し、「ほっと胸をなで下ろした」という。その後、警視庁が「原因物質はサリンの可能性が強い」と発表。「いったい誰がまいたのか」と怒りが込み上げた。
聖路加国際病院が事件から1週間で受け入れた被害者は延べ1410人。うち2人が1カ月以内に死亡した。二次被害に遭った医療従事者や後遺症に悩む被害者もいた。30年前を振り返り、「いまも苦しんでいる人がいる。被害者の支援などを進めていくべきだ」と訴えた。
〔写真説明〕インタビューに答える、地下鉄サリン事件被害者を治療した聖路加国際病院元救急医の奥村徹氏=11日、神奈川県鎌倉市
(ニュース提供元:時事通信社)

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