2025/03/18
防災・危機管理ニュース
【北京時事】中国で社会問題となっている大学生の就職難が、一段と深刻化している。景気低迷が続く中、今年の大学・大学院などの卒業者数は1222万人と過去最高を更新する見込みで、政府に抜本的対策を求める声が上がっている。
「ずっと仕事が見つからない」。2月下旬、北京市内で開かれた企業の合同採用説明会に参加した男性(24)は、ため息をついた。昨夏、山西省の大学を卒業し地元で仕事を探したが見つからず、北京に来た。「企業に電話したり履歴書を送ったりしているが、面接までたどり着けない」という。
今夏に卒業を控え就職活動をしている北京市内の大学4年の男子学生(24)も「国有企業や大企業に入りたいが、募集が少なく狭き門だ」とこぼす。専攻の企業財務に関連する仕事を希望しているものの、「経験者優先の企業ばかりだ」と嘆く。
中国国家統計局によると、今年1月の若年層都市部失業率(16~24歳)は16.1%で、全体(5.2%)と比べ際立って高い。長引く景気低迷で、企業が新卒採用を絞り込んでいることが背景にある。
もう一つの大きな要因は、学生と企業の間のミスマッチだ。2000年に12.5%だった大学や専門学校など高等教育への進学率は、23年には60.2%に達した。かつての「一人っ子政策」や経済発展に伴う教育熱の高まりが背景にある。学生自身の希望に加え、高学歴で「立身出世」を願う親の期待もあり、若者が仕事に求める条件は高くなっている。
中国人民大学中国就業研究所の24年10~12月期の報告書によると、学生に人気上位の業種はコンサルタントやIT関係などだが、そうした業種が主に募集しているのは現場の販売員や作業員が多い。合同説明会に参加した大手保険会社の採用担当者も「営業職は不足しているが、オフィスでの事務職を希望する学生ばかりだ」と話す。
政府は、学生の起業を後押しするなど対策に躍起だ。今年の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では、人工知能(AI)関連など新産業を育成し、雇用の受け皿にする方針も示した。ただ有識者からは、ミスマッチ解消に向け「企業の需要に合わせ大学の募集人数や設置学部を見直す必要がある」(江蘇省産業技術研究院の劉慶院長)と教育改革を求める意見も出ている。
〔写真説明〕合同採用説明会で学生らと面談する企業の採用担当者=2月21日、北京
(ニュース提供元:時事通信社)

- keyword
- 中国
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
-
-
-
-
-
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方