2011/05/25
事例から学ぶ
配電盤メーカーの国分電機は、茨城県常陸大宮市にある工場が被災した。4日間の停電、10 日以上の断水、そしてガソリンが手に入らないという状況の中、BCP で定めた目標時間内に主要業務を再開させた。
「とにかく茨城工場との連絡が取れませんでした」同社でBCP 策定を中心となって進めてきた取締役業務本部長の赤司善治氏は東日本大震災の発生直後の様子をこう振り返る。東京都が昨年度に実施した「BCP 策定支援事業」に参加し、昨年11 月に初めてBCP をつくり上げた。その矢先のことだった。
計画では、携帯電話で安否を確認することになっていたが、まったく電話が通じず出足からつまずいた。ようやく工場と連絡が取れたのは、地震発生から2時間近くが経過した午後4時半過ぎのことだった。その電話も数分間で切れ、翌朝まで通話ができない状態が続いた。
茨城工場は内陸寄りに位置しているため津波による直接的な被害の心配は無い。しかし、数分間の通話では、震度6強の揺れで、建屋内部で一部天井が落ちたり壁が崩落するなどの大きな被害が出ていることが判明した。ただ、当日働いていた93 名ほどの従業員については1人が頭を打撲するなど軽く負傷した程度で大きな人的被害が無かったことも分かった。ちなみに、工場は20 数年前に建てられた鉄骨ALC造で耐震基準は満たしている。数分間の通話では、作業ができる状態ではなかったため、マネージャークラスを残し、一般従業員とパート社員はすべて帰宅させたことまで報告を受けた。
被災当日は工場長と副工場長が東京出張で不在だった。それでも、現地では代理の課長が指揮命令をつかさどり混乱は起きなかったという。同社が策定したBCP では、偶然にも、工場長と副工場長の不在時に茨城工場が被災するという今回の被災と同じシナリオを立てていたのだ。
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