2025/06/03
防災・危機管理ニュース
【カイロ時事】パレスチナ自治区ガザで5月26日から始まったイスラエル主導の支援物資配給に関連して住民が死傷するケースが相次いでいる。ガザ保健当局は3日、配給所付近でこれまでに100人以上が死亡、500人近くが負傷したと発表。住民は「なぜ人道支援で血が流れなくてはならないのか」と怒りを抱えつつも、「子供を食べさせるためには何でもする」と、危険を冒して列に並ばざるを得ない状況だ。
配給は、イスラエルと米国が実質的に設立した組織「ガザ人道財団(GHF)」が担う。配給所をガザ最南部ラファに3カ所、中部に1カ所設け、順次活動を開始した。現場では米企業が配給所を運営し、イスラエル軍が周辺の治安を維持。これまでに600万食近くを配ったとしている。
イスラエルが3月初旬から約2カ月半にわたり物資の搬入を阻止し、ガザ住民は深刻な食料不足に直面。国連の配給所が約400カ所あったのに対しGHFは4カ所にすぎず、配給所には住民が殺到している。
地元当局や複数の目撃者は、イスラエル軍が住民を銃撃したと主張している。
通信アプリを通じて時事通信の取材に答えた南部マワシ地区で避難生活を送るヤヒヤ・アルヘイルさん(34)は、妻と一緒に14キロ先の配給所に連日通っている。3人の子供に与える食料が尽きたからだ。
1日目の到着時には既に物資がなくなっており、朝6時に出発した2日目でチーズと菓子を1箱ずつ確保。地面に放り投げられた食料に人々が襲い掛かるように群がって取り合いとなり、辛うじて得られた食料だった。午前2時半に避難先を出て列に並んだ3日目、やっと食料ボックスを手に入れることができたという。
アルヘイルさんは「物資が用意されると、混乱が始まった」と指摘。群衆を遠ざけるためにゴム弾や催涙弾が発射され、人々がなぎ倒されたと証言した。
イスラエルは、ハマスが国連主導の支援物資を略奪し、高値で売っていると主張。ハマスの資金源を断つために、独自策が必要だと訴えていたが、アルヘイルさんによれば、支援物資は既に市場に横流しされている。
国連はイスラエルの食料配給について、紛争当事者が関わるため「中立性が保てない」と非難している。ガザの大部分を征服する計画を明らかにしているイスラエルのネタニヤフ首相は、支援が受けられる南部に住民が避難すると発言。支援が強制移住の「餌」に使われるとの懸念も出ている。
〔写真説明〕パレスチナ自治区ガザ南部で配給所から支援物資を運ぶ人々=5月29日(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

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