生成AIの開発・学習段階においては何が著作権侵害にあたるのか(イメージ:写真AC)

はじめに

前回、「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日・文化審議会著作権分科会法制度小委員会)(以下「考え方」)をご紹介するかたちで、AI生成物の生成・利用段階における著作権侵害についてご説明しました。

今回も、同じく「考え方」をご紹介するかたちで、生成AIの開発・学習段階における著作権侵害について著作権法30条の4との関係を中心にご説明してみたいと思います。

著作権法30条の4

平成30年の著作権法改正によって新設された著作権法30条の4は、著作物利用に関する権利制限規定であり、所定の要件をみたす場合には、著作権者の許諾なしに著作物を利用することができます。

著作権法30条の4

著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

1 略

2 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第47条の5第1項第2号において同じ。)の用に供する場合

3 略

通常、生成AIの開発・学習に著作物を利用することは、2号の情報解析の用に供する場合に該当しますので、生成AIの開発・学習段階において著作権者の許諾なしに著作物を利用することができるということになりそうです。

享受目的が認められる場合や著作権者の利益を不当に害する場合は著作権侵害も(イメージ:写真AC)

しかしながら、同条の適用要件として、➊同条の柱書において「当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」とされていますので、「享受目的」が認められる場合(「非享受目的」と「享受目的」とが併存する場合を含む)には、同条が適用されないということになります。

また、同じく、➋同条の但書において「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」とされていますので、著作権者の利益を不当に害する場合にも、同条が適用されないということになります。

このため、「考え方」では、生成AIの開発・学習段階において上記➊➋に該当する場合が例示されるなどして取り上げられていますので、以下、順にご説明します。