業務委託契約は、実は民法に規定がない契約(イメージ:写真AC)

はじめに

企業内の業務をアウトソースする方法として、外部の企業やフリーランスに対し、当該業務を委託することが行われています。その際、発注者側を委託者、受注者側を受託者とする、業務委託契約が締結されることになります。

この業務委託契約については、民法に規定のない契約になります。民法第3編第2章には、典型契約といわれる13個の契約類型についての諸規定が置かれており、典型契約には、売買契約、消費貸借契約、賃貸借契約などがあります。この13個の典型契約の中に業務委託契約は入っていません。このため、業務委託契約は、非典型契約といわれます。

私人間の契約関係はその意思に基づいて自由に形成できるという契約自由の原則の下、非典型契約である業務委託契約も、契約当事者の意思により、(強行規定や公序良俗に反しない限り)自由に形成することができます。

そして、業務委託契約において何かトラブルなどが発生した際、原則として、当事者間で合意された内容(契約内容)に基づいて判断・対処・解決されていくことになりますが、合意が欠缺(けんけつ=ある要素が欠けていること)している部分などについては、典型契約のいずれかに引き寄せて、当該条文が適用されていくことになります。

このような場合の前提として、当該業務委託契約が13個の典型契約の中で、どの契約の性質を持っているものなのかという、性質決定が必要になります。この点、一般に、業務委託契約は、請負契約の性質を有するものと、(準)委任契約の性質を有するものとに二分できるといえます。

そこで、今回、請負契約と(準)委任契約についてご説明するかたちで、業務委託契約について取り上げてみたいと思います。

請負契約とは

請負契約の典型は建物の設計・建築(イメージ:写真AC)

請負契約について、「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」(民法632条)と規定されています。請負契約は、仕事の完成とそれに対する報酬の支払いを本質的要素とする契約です。典型的には、建物の設計・建築がこれにあたります。

(準)委任契約とは

(準)委任契約の典型はコンサルティング業務(イメージ:写真AC)

委任契約について、「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」(民法643条)と規定されています。その上で「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する」(民法656条)とされており、法律行為でない事務の委託は、準委任契約といわれ、委任契約に関する民法の規定が準用されることになります。典型的なものとしては、コンサルティング業務がこれにあたります。

請負契約と(準)委任契約の最大の差異

請負契約と(準)委任契約との最大の差異は、仕事の完成(結果)を約束するかどうかというところにあります。請負は結果債務であり、(準)委任は手段債務であるなどといわれます。