副業・兼業の現場で今、何が起きているのか?
業界横断8万人調査から見えた“副業リスク”の実態とは

ESGリスク勉強会 6月24日

株式会社フクスケ代表取締役
小林大介氏

ESGリスク勉強会をオンラインで開催。フクスケ社長の小林大介氏が副業・兼業トラブルの現状や業界別・業種別の傾向などを解説

副業トラブル発生率は農林水産・不動産・製造業で高い

ESGリスク勉強会は6月24日、オンラインで開催。副業トラブル防止のための第三者監査プラットフォームを運営するフクスケ社長の小林大介氏が、自社で行った実態調査にもとづき、副業・兼業にかかるトラブルの現状や業界別・業種別の傾向、顕在化しやすいリスクなどを解説した。

小林氏は「副業をめぐる問題の根本原因は人手不足」と指摘。就活する学生の2人に1人が副業の可否を企業エントリーの参考にするといったデータや、副業希望者の約半数が会社に制度がないためできずにいるといったデータを紹介し「今後は法律の改正などで基本的に副業を禁じられなくなる方向」と話した。

ゆえに企業は、副業を解禁しないと採用難と離職リスクが増大し、一方で解禁すると制度運用に多くの時間と労力がかかるうえトラブルのリスクが生まれると説明。高リスクの業界では第三者による副業の審査、リスク診断、コンプライアンス研修、損害保険などのサポートが求められるとした。

こうした背景から、同社は昨年12月~1月、インターネットを使った副業・兼業トラブルの実態調査を主要14 業界97業種に勤める20歳~ 65歳の社員に対し8万人規模で実施。結果、過重労働や本業への支障、本業先のイメージダウンなど、副業に起因する何らかのトラブルを33.8パーセントの人が経験していたとした。

小林氏は「企業が手放しで副業を許可した場合、33.8パーセントの確率でトラブルが発生する。ただし、これはあくまで平均値。業界別・業種別にみるとトラブルの発生率は最大で2倍の差がある」と発言。「副業の総量とトラブル発生率を掛け合わせると、高リスク、中リスク、低リスクの業界が見えてくる」と話した。

●業界別 副業率×トラブル率

出所:株式会社フクスケ「業界横断 副業・兼業者の実態調査」

それによると、高リスクの業界は農林水産業、不動産業、製造業。「農林水産業はそもそも兼業が多く、働く時間や収入に寛容なゆえに過重労働になりがち。不動産業は本業に対し副業で得られる収入が多くなりやすく、情報持ち出しなどのリスクが発生しやすい。製造業は働く人が多く、電子関連などは扱う情報がクリティカルで、過重労働と情報漏えいのリスクを合わせ持っている」と分析した。

一方、低リスクの業界は医療・福祉、教育、運送・輸送。「これらの業界で働く人は、副業でも同じ業界で働く傾向が強い。人手不足を補うために医者や講師、ドライバーが他を掛け持ちすることが常態化。本業と同じ仕事をしているためトラブルが起きにくいが、それを業界が黙認し、そもそも副業の意識がないという別の問題がある」と述べた。

参加者の声

・世の中の流れ、他の会社も工数増で同じような悩みがあると理解できて課題感の全体像を把握できました。

・個々の判断でありつつも、ノウハウの蓄積がトラブル対応へのリスクヘッジとなる点がよく理解できました。フクスケさんのコンプラ研修も受けてみたいと思いました。

・副業リスクの実態がよくわかりました。

・業種によってリスクの発生状況や環境が異なる点が非常に興味深かった。自身の業界についても理解したいと思った。

・思っている以上に副業をしている人が多く、また許可している会社も多いことに驚いた。隠れ副業の方がよりリスクが高いと感じました。


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