2015/04/10
防災・危機管理ニュース
株式会社新建新聞社は3月13日、『震災復考~安全な住まいは可能か~』を発刊した。
今年1月で阪神・淡路大震災から20年、3月で東日本大震災から4年が経過した。この間、住まいの安全はどこまで高まったのか。何が壊れ、何が残り、何が変わったのか。復興を追体験することで住まいを取り巻く現在の技術環境や産業構造、法制度や社会システムを反省し、いつか起こる首都直下地震や南海トラフ巨大地震への備えとすることが、この本の主眼となっている。
2011年の東日本大震災の直後、著者の樫原健一氏は住宅専門紙「新建ハウジング」に『斜面の防災都市に託す、夢』を寄稿。建築技術の限界を十分知りつつ、それでもなお災害に強い住まいとまちを目指して歩むことをあきらめない技術者の言葉だった。3.11は全ての建築関係者にとって、終焉ではなく、はじまりだったのだ。
本書は2012年6月から2013年9月までの1年半にわたって「新建ハウジング」紙上で展開された思考の旅の記録だ。建築構造力学を根底におきながらも、難解な解説を排し、経済学、社会学、政治学、歴史学、生活学と幅広い観点から平易な言葉で展開される論考は、災害復旧期の貴重な記録であり、住まいの本質や暮らしの安全を考える格好の教材であり、また日本列島における災害と人間の壮大な物語でもある。
本編の後には「私家版東日本大震災レポート」を収録。著者ならではの視点でつづられる、震災復旧の貴重な資料となっている。建築士をはじめとする住宅関係者をはじめ、一般の方にもおすすめできる1冊だ。
新建オンラインストアで販売中。
著/樫原健一
発行/新建新聞社
定価/1620円(本体1500円+税)
四六判224頁
2015年3月13日発行
【コンテンツ】
第一部 震災から浮上した住まいをめぐる諸問題
震災と住まいについて
首都を襲った歴史地震
都市直下型地震の衝撃
巨大地震がもたらす広域災害
第二部 サバイバル列島の住まい
日本列島の人類史1~4
第三部 震災ルネサンスの社会
震災を回避するために
震災から立ち直るために
震災から復興するために
震災から再生する社会
第四部 木造技術のフロンティア
性能規定型の耐震設計法
耐震補強技術
新しい耐震技術
これからの住まいと耐震技術
私家版 東日本大震災レポート
東北地方太平洋沖地震発生
仙台とその周辺地域
三陸海岸の被災地
斜面防災都市可能性
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方